2016 Fiscal Year Research-status Report
絶滅危惧種の野生復帰事業にかかる野生生物保全教育の意義と課題の析出
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15K16248
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
本田 裕子 大正大学, 人間学部, 准教授 (00583816)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コウノトリとの共生 / 野生復帰事業 / 環境教育 / ふるさと教育 / 農業者の意識 / アンケート / 地域のシンボル / コウノトリ育む農法 |
Outline of Annual Research Achievements |
コウノトリの野生復帰事業に主に焦点をあて、「コウノトリとの共生」に向けた意識啓発をどのように行っていけばよいのかについて、その現状把握・分析を行った。事業が実施されている兵庫県豊岡市については、平成29年度からの実施に向けた、小学3年生から中学3年生までを対象にした「ふるさと教育」についてその策定過程を担当者から聞き取り調査を実施できた。「ふるさと教育」では、小学3年生・5年生では、コウノトリについて知り、コウノトリと共に生きることについて学ぶことが想定されていた。これまで、コウノトリの環境教育については、生息エリアに近い学校や担当教員が熱心である学校という偏りが見られたが、「ふるさと教育」では市内の全ての小学校・中学校が対象であり、こどもへの意識啓発については重要な役割を担うことになる。 また、コウノトリは水田を餌場環境とするので、農業者への意識啓発も必要となる。昨年度に実施した市民アンケートを農業従事別に分析し、2006年・2011年に実施したアンケート結果とも比較したところ、非農業従事者と同様にコウノトリおよび事業を肯定的に捉えていることが確認できた。さらに、以前は野生復帰事業の評価について「どちらともいえない」と判断を留保する傾向があったがそれが昨年度のアンケートでは見られなかった。農作物の付加価値にもなる「コウノトリ育む農法」といったこの10年間の取り組みが農業者の意識をより肯定的なものに変化させたことが伺えた。 さらに、今年度はこれまで各地で実施されてきた野生復帰事業について事例横断的な比較も実施した。豊岡市や佐渡市では他の事例と比較して「地域のシンボル」とする認識が確立されていることが伺えたが、経年変化としては協力意思は低下している傾向が見られ、野生復帰事業に関する意識啓発を考える上での課題を把握することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度から兵庫県豊岡市で実施される「ふるさと教育」について、その策定過程を担当職員(教育委員会、コウノトリ共生課)から聞き取り調査をすることができ、意識啓発・環境教育を考える上での重要なテーマを得ることができた。 また、各地で実施されている野生復帰事業について、これまで実施してきたアンケート調査を横断的に比較することにより、事例の特徴や課題を明確にすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
兵庫県豊岡市については、平成29年度から実施される「ふるさと教育」の進展状況を把握することにしたい。また、こどもだけではなく、大人への意識啓発として新たなアクターを考察することにも取り組んでいきたい。 さらに、他事例でも、野生生物との共生をテーマにした環境教育の実践事例がないか、情報を収集し、現状を把握することに行いたい。 これらのことをふまえ、野生生物保全教育の構築に向けた考察を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
国外への調査が実施できなかったため、次年度への繰越となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度には国外調査を実施する予定である。
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