2015 Fiscal Year Research-status Report
理科×ものづくり教材:化学的ピタゴラ装置の製作と教育効果の検証
Project/Area Number |
15K16250
|
Research Institution | Kurume Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 美紗 久留米工業大学, 工学部, 准教授 (00389420)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 色の変化 / 形の変化 / 気体の発生 / からくり |
Outline of Annual Research Achievements |
化学的ピタゴラ装置の製作に取り組んだ。装置製作のためのプロジェクトチームを教員志望学生により結成し,(1)テーマの選出,(2)予備実験,(3)部分的装置化,(4)部分的公開,を段階的に実施した。 (1)観察者の印象付けとなるテーマおよび実験内容の選出を行った。色の変化および状態の変化を全体テーマとし,それに基づき,酸塩基指示薬による水溶液の呈色反応,銀鏡反応,気体発生反応などを複数選出した。 (2)上記実験の予備実験を行った。はじめに通常化学実験で用いるガラス製の実験器具等を使用して適性条件での実験を行った。次に安全性や反応性を考慮したプラスチック製の実験器具等を使用して条件を振り,反応効率の良い実験条件を探索した。水溶液の呈色反応では,安定した反応を観察できるように濃度調整を行い,反応時間の工夫のために温度条件も試行した。透明プラスチック容器を熱変形や接着により独自に作成し,適当な容器を作り出した。化学的要素を連鎖させるためのつなぎを力学的な運動を含めて選定した。磁石や電気モーターなども利用した。 (3)予備実験のうち,安全かつ安定して反応する実験を化学的要素とし,力学的な運動のつなぎにより2~5要素の連鎖を果たす仕組み(装置)を部分的ではあるが製作した。 (4)製作した部分的装置を本学オープンキャンパス等で実演公開し,化学的な解説を付帯して教材としての意味合いを模索した。また,一部ではあったが装置の動画の撮影を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が事故により負傷し,入院,通院を行ったため,実験および研究指導ができない状態がしばらく続き,研究の進行にやや遅延が発生した。装置製作のためのプロジェクトチームを教員志望学生により複数結成し,以下段階的に実施した。 (1)具体的な化学実験候補をテーマに合わせて多数選出した。それらの予備実験は週ごとに計画を立てて実施した。予想した結果が出ないことがあり,数週にわたり考察・改良を進めたため,予備実験数が計画よりも少なくなってしまった。また,予備実験の結果,装置化しにくいまたは相応しくない実験も複数あることが分かった。 (2)予備実験により装置化できるものをつなぎ合わせ,部分的に装置を製作した。要素とつなぎを連鎖させる仕組みを考え,工作し,形に起こすことが技術的に難しく,繰り返し試行し改良を重ねるのに時を費やしてしまった。 (3)連鎖できた装置を実演公開したが,実験成功率が低く,装置改良が必要であることがわかった。また,安全性を保障できない部分を含む装置では動画を撮影したが,動画で伝える技術も未熟であり,この点においても改良が必要であることがわかった。 以上より,計画は全体として遅れ気味であるが,問題解決のための課題が明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
以下の対策により課題を解決し,計画の円滑化を図り,目的達成による研究成果を得る。 (1)プロジェクトチームを新たに複数結成し,同時進行で装置製作~仕上げ~公開を目指す。 (2)予備実験数を増やす。予想した結果が出ないことがあるのは当然であるので,複数の実験を同時進行できるようにグループ分けを行う。また,装置化しにくい実験の方法や材料の変更に関しても,同時進行で行う。化学実験要素とつなぎを連鎖させる仕組みを考え,形に起こすことが技術的に難しいため,工作担当のグループも結成する。 (3)実験成功率が低いものの装置改良を,実験担当グループと工作担当グループが分野をわけかつ協力して検討する。連鎖数の少ない部分的な装置を組むことから着手する。同時に撮影の技術も修得する。プロジェクトチーム以外の学生が動画を観て,内容がすんなり理解できるくらいの伝わりやすさを試行する。 (4)タブレット端末を用いて観察者の任意の撮影を行い,着眼点と興味の観点を調査し,同時に公開形式のひとつとして可能性を模索する。
|
Causes of Carryover |
研究計画のうち,予備実験に費やした割合が多く,従来の実験器具を使用することが多かった。これらの予備実験を装置化する際に,反応効率や安全性を高めるための実験器具の選定や改良等の工夫が必要となる。さらに,化学実験要素を連鎖させるためのつなぎには力学的なものも含まれるため,工作材料が装置化の過程で必要となる。 また,装置化が一部しか果たせず,公開用としてではなく記録的な意味合いでの撮影にとどまったため,簡易撮影器具で対応することとした。したがって撮影用機材およびタブレットの購入を次年度に変更した。以上の複数の理由により,当該年度所要額が満たせなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画を複数チームで同時進行するため,予備実験を随時装置化していく。この際に,反応効率や安全性を高める実験器具の選定や工夫が必要となるため,様々な実験器具を試行する。さらに,化学実験要素を連鎖させるつなぎ用の工作を行うため,工作材料を充実させる。 装置を完成させた後,公開する手段として動画公開と実演を行う。まず,公開用の動画を撮影するための機材およびタブレットを取り揃える。さらに,実演公開を行うために移動可能な様式にするなど装置を整え,備える。
|