2016 Fiscal Year Research-status Report
交易理論に基づく協調的問題解決力を育成する体験型教材の開発と評価
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15K16265
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
奥田 麻衣 神奈川大学, 経済学部, 助教 (90711549)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 経済学リテラシー / リカードモデル / アクティブ・ラーニング / ゲーム学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】本研究は、経済分野の重要なテーマである交易理論を基盤とした実用性の高い学習ゲーム教材の開発とその教材を中等教育へ適用することを目指す。利益の追求と捉えられがちな交易の背景には、他人とのシンパシーが不可欠であることに注目し、交易量を増大させる方略を探求する過程を通じてより良い取引を行うには「信頼」が必要であることを体験する学習ゲーム教材を開発する。本研究では、交易に「信頼感」を付加したゲームを開発し、「最適な状態」と「プレーヤの現状」の差分を定量的にフィードバックする機能を盛り込む。ゲーム内容・心理プロセス・学習効果の関連性を分析し、経済学リテラシーの獲得を目指す指導方法とカリキュラム開発を行う。 【研究実施計画】本研究では、国際経済学の重要な理論モデルである交易理論を題材にし、交易理論が想定する世界を教室で行うことのできるゲームに置き換え、生産と取引の過程に「信頼感」を制御するルールを新規に加える。他者との交換で成立する交易を円滑に行うには、同感と相互信頼が不可欠であることを取引量の変化から直感的に理解させ、社会を豊かにする経済学リテラシーを育成する学習ゲームを提案し、その実践のために不可欠となる指導方法と教材を開発する。(A)交易理論の要件の構造化と「信頼感」を加えた学習ゲームのフレーム作り、(B)学習ゲームを用いた指導方法とカリキュラム開発、(C)中学校での実践と評価、教員研究会でのデモンストレーションと教材導入に向けた指針作りの3ステップで研究を進める。 【研究実績】研究二年次は、(B)について大学生を対象にミクロ経済学講義(対象40名)、初年次導入ゼミ(対象25名)においてプレ実験を行い、中学校の授業時間に合わせた指導方法を開発し、中学校2校の2年生6クラスを対象に道徳の国際理解項目で実践を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、1年次:ゲームのフレーム作り、2年次:学習ゲームの指導方法とカリキュラムの開発、3年次:中学校での実践と評価、であった。1年次にゲームのフレームとしてゲーム内の変数である信頼感を「自分が最適な行動をとる確率が1であることを相手に伝える」ことと「相手が最適な行動をとる確率が1で発生する」ことの2つに分割したゲームのフレームを作成した。2年次では、1年次に開発したゲーム教材について中学校のカリキュラム内での位置付けについて中学校教員の協力を得ながら分析を行い、道徳の国際理解項目において6時間の学習時間枠のうちの2時間を用いた指導方法を開発することができた。3年次も継続して同じ項目の指導時間において学習ゲームを用いた指導を行うことができる見込みであるので、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、中学校での実践と評価を行うことである。中学校での実践を行う中で、ゲーム中の生徒の言動に「うまくできないのは、その子の努力が足りないからだ」、「下手な人とペアになると自分が損をする」といった発言に加えて、「(配られた手札の)状況が良くないのであきらめて死ぬのを待つ」や「無理、この国ダメ」という状況を所与としてしまう発言だけでなく、自分の不利な状況を他国に訴えて援助を引き出す行為や、将来うまくいったときに返済するという将来への期待を持たせて融資を引き出す行為なども見られた。ゲーム内で多様な議論が行われやすくなるよう身体性を取り入れてコミュニケーションを誘発するゲーム教材へのブラッシュアップを行い、新たな教材を用いた実践と評価を行う。
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Causes of Carryover |
知識の外化でデジタルペンセットを利用予定であったが、中学校でのネットワーク環境に合わせた技術調査を行っており導入が保留となったため物品費への計上ができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
中学生が利用しやすい媒体としてタブレット端末の利用も想定して、知識外化の環境を構築するために使用する。環境構築には専門家のアドバイスを仰ぐことも検討する。
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