2015 Fiscal Year Research-status Report
オンライン経済実験教材の開発と新しい経済学教授法の提案
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15K16268
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Research Institution | Kagoshima National College of Technology |
Principal Investigator |
林 良平 鹿児島工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80633544)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経済学教育 / 実験経済学 / 行動経済学 / ゲーミフィケーション / e-ラーニング / アクティブ・ラーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の実施計画は、オンライン経済実験用プラットフォームの開発と、経済実験のセットアップであった。 プラットフォームの開発は、はじめに時間割引率やインフレの再現実験などの被験者間で相互作用が伴わない実験を作成した(第1世代)。実験管理者用の管理画面や、実験後に自動でグラフを生成・表示する機能などを盛り込み、授業を円滑に進行しやすいよう工夫した。次に、ダブルオークションや公共財実験など、被験者間で相互作用の伴う実験を作成した(第2世代)。被験者間で相互作用が伴うため、データの同時書き込みやデッドロックなどの同期問題に直面しシステムが動作しなくなる不具合が発生した。また、これらの問題は被験者数が増大するにつれて発生確率が上昇するため、大人数の実験には適さない設計であることが明らかになった。そこで、200人規模で実験しても落ちないシステムの構築を目指して、プログラミング言語をElixirに変更して作成した(第3世代)。Elixirはデータを逐次的に処理するため、原理的に同時書き込みやデッドロックが発生しない。また、データを高速で処理できるため、大人数での実験にも耐えられる。さらに、データを高速で処理できるように、実験中のデータをすべてメモリ上で管理することで、計算時間を大幅に短縮することに成功した。 第1世代、第2世代の実験は、鹿児島高専や国内の大学の経済学関連講義で用いられ、有効に活用されている。第2世代の実験は行動経済学会第9回学会の特別セッション「スマホで簡単体験!経済実験」で発表し、100人程度の被験者のデータを処理できず、失敗した。その後、第3世代の開発を進め、第2世代と同様の実験が第3世代では問題なく動作することが確認されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、今年度の目標はオンライン経済実験用プラットフォームの開発と、経済実験のセットアップが目標であった。試用・改善、公開は次年度以降の計画であった。しかし、プラットフォームの開発はすでに完了し、実験のセットアップも簡単にできるようになった上に、さらに試用・改善、公開までとりかかっている。いくつかの大学では授業で本システムが利用されており、有用な改善コメントも寄せられている。また、行動経済学会第9回学会の特別セッション「スマホで簡単体験!経済実験」で学会参加者を対象に本システムを用いた実験を行っており、周知も進んでいる。そのため、当初の計画以上に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
第3世代の実験システムは、被験者の入力した情報が他の被験者の画面に即時に反映されたり、大人数で実施できるなど、経済実験を実施する上で有利な点が多い。そのため、今後は第3世代の実験システムに60程度実験を実装し、教師が手軽に確実に実験を実施できるシステムに仕上げていきたい。 各実験の設定項目については、当初は教師が詳細に設定できるように自由度の高いものを作っていたが、第3世代では「システムを開いて5分で実験が始められるシステム」を目標に、設定項目を減らして、簡便さを優先する方針に変更して開発を進めている。今後も教師の使いやすいシステムを目指して、改善を重ねていく。 また、実験実装に合わせて教師用手引書をpdf形式で整備していく。教師用手引書には、実験の背景にある理論、実験結果の読み取り方、指導方法、関連する経済学の項目、実験のカスタマイズなどについてまとめる。 さらに、実験ログを収集するシステムを別途構築していく。それぞれの授業などで実施された実験のログから、学生の理解の躓きやすいポイントやバイアスなどの発見につながるヒントを得られるよう、データを整備していく。
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Causes of Carryover |
前倒し請求の留意事項③「直接経費の請求額は、原則10万円単位としてください」に基づき、10万円単位で請求したところ、予算執行した所要額の端数1,509円が留保されたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度予算と合算して使用する。
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Remarks |
第1世代、第2世代の実験については、セキュリティー上の脆弱性が懸念されるため、一般に公開していない。第3世代は一般に公開され、だれでも簡単に登録、実験できるよう設計されている。
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[Presentation] スマホで簡単体験!経済実験2015
Author(s)
山根承子、林良平、佐々木俊一郎
Organizer
行動経済学会第9回大会
Place of Presentation
近畿大学 東大阪キャンパス B館
Year and Date
2015-11-28 – 2015-11-29
Invited
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