2017 Fiscal Year Research-status Report
イギリス土木・機械技術の展開と工学理論との相互関係について
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15K16273
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
小林 学 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (60447555)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リチャード・トレビシック / 蒸気機関車 / ディー橋 / ウィリアム・フェアベーン / イートン・ホジキンソン / 実験と理論 / ブリタニア橋 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、資料調査・情報収集のため英国へ2度の出張を行った。 コーンウォールの著述家サイモン・パーカー氏が出版したHorses Stood Still: The Lost Letters of Richard Trevithickのもとになったトレビシックの手紙を見たいとパーカー氏と連絡を取る中で、この著作が彼の創作であったことが分かった。本来であれば、パーカー氏はフィクションである旨、著作に記すべきであったろう。英国に赴いた際にパーカー氏と面会し、詳細について話をすることができた。この著作執筆の彼の目的は、子どもたちにトレビシックを知ってもらいたいということであった。悪意があってのことではなかったので、彼の気持ちを考え、問い詰めることはしなかった。 Royal Institution of Cornwallを訪問した際、この図書館のアーキビストAngela Broome氏が私に紹介してくれたことでこの著作の存在を知った。あまりの内容に驚愕するのと同時に新しい史料が発見されたという喜びもあったように思う。その気持ちが、即断を招き、またRoyal Institution of Cornwallという権威ある機関の図書館に蔵書されているということもあって、この著作が新史料に基づく著作だと誤認するに至った。結果、平成28年に日本科学史学会第63回年会にてこのフィクションに基づいて研究発表をしてしまった。 当該研究の進捗に大きなダメージがあったため、研究の方針や体制を大きく変える必要に迫られたが、英国・ブライトンにあるThe Keepなるアーカイブを新たに訪問することができた。このアーカイブにはデービス・ギルバートとその一族の資料が保存されている。これら史料等を用いながら、研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で書いたように、フィクションを実在の史料に基づくものと誤認したことで研究に大きな影響がでた。 一方で、The Keepというアーカイブを新規に開拓し、私が未見であった多くの史料を閲覧できた。これは当該研究を遂行する上で大きな前進となる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、資料調査・情報収集のため英国への出張を行う予定である。 「蒸気機関と熱理論との相互関係」については、私がこれまで閲覧・収集してきた資料および平成30年度に収集する資料を用いながら、研究を継続する。 「土木技術と材料理論との相互関係」については、平成29年度から継続して特に橋梁の形状の展開の理由を、技術の内的発達法則によって解明するための研究を行う。 「18-19世紀の指導的技術者が使った工学理論の水準と具体的な設計との相互影響」については、平成29年度から継続して、当時の工学理論の展開と具体的な蒸気機関・土木技術の設計・形状との関連を研究する。 当該研究の鍵となる人物の一人であるフェアベーンの伝記Richard Byron, William Fairbairn: the experimental engineer, A study in mid 19th-century engineeringが2017年に出版された。これまでフェアベーンの伝記で公刊されたものは、フェアベーン本人が一部執筆しウィリアム・ポールが編集・完成させたThe Life of Sir William Fairbairn, Bart(1877)くらいしかなかったため、当該研究にとってこの新著作が重要な書籍であると認識している。Byronは、この書籍のタイトルにあるようにフェアベーンをthe experimental engineerと称している。私も全く同感であるが、同著をさらによく検討するとともに、フェアベーンの理論と実験との関係がどのようなものであるかを検討する。 平成30年度は当該研究の研究期間の最終年度にあたるため、これから収集する資料およびこれまで収集してきた資料を十分に活用し、研究を加速させる。
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Causes of Carryover |
平成28年度からの未使用金があったことと研究の遅れからリオデジャネイロの国際科学史技術史会議の参加を取りやめたことが理由としては大きい。それを挽回すべく、平成29年度は資料調査・情報収集のため二度渡英した。 平成30年度は、英国への資料調査・情報収集のための渡航費で予算のほとんどを支出する予定である。また必要とあれば研究上必要な資料や物品等の購入費等に充てる。
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