2015 Fiscal Year Research-status Report
放射線被ばくに関する科学知識の生成と流通―1950年代から60年代の日本を中心に
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15K16274
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中尾 麻伊香 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (10749724)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放射線被ばく / ABCC / 原爆調査 / 物理療法 / ラジウム温泉 / 西脇安 / 眞鍋嘉一郎 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は以下のように研究を進めた。 1.ビキニ核実験の被害を世界に伝え、科学者の反核運動のきっかけを作ることに貢献した西脇安についての研究を進め、共著の英語論文を刊行した(2015年8月)。パグウォッシュ会議60年の記念シンポジウムを科学史学会で開催し、西脇についての報告を共同で行なった(2015年5月)。 2.7月から12月まではベルリンのマックス・プランク科学史研究所に滞在し、放射線医学と被曝の歴史についての研究を進めた。ドイツとチェコのラジウム温泉やウラン採掘場でフィールドワークを行なったほか、原子力技術者へのインタビューなどを行なった。(2015年9月、11月) 3.放射線医学と被曝の歴史についての研究を進めるなかで、「物理療法」が興味深い分野として浮かび上がってきた。「物理療法」に注目することで、それぞれ異なる出自を持つ西洋医学と東洋医学(漢方医学・鍼灸)が、大正・昭和期に同様の療法を行っていたことがわかった。この内容をまとめた論文は、次年度に刊行される近代日本の精神療法を主題とする論集に掲載される予定である。 4.被ばく者調査に関しては、2015年11月に刊行された長澤克治氏の『小児科医ドクター・ストウ伝――日系二世・核実験・がん治療』の合評会を企画した(2016年3月26日、生物学史研究会、東京大学駒場キャンパス)。また、広島の放射線影響研究所の訪問を行なったほか、ABCCで働いていた秘書や看護師へのインタビューを行なった(2016年3月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画と変更した部分(アメリカでの調査を翌年以降に行なう)もあるが、ベルリンや国内での調査を進めており、研究ネットワークの構築も含め、放射線被ばくをめぐる科学知識の生成過程について、包括的な調査・研究ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、放射線被ばくに関する科学知識の生成過程の検討をさらに進めるとともに、主に1950年代から60年代におけるその流通過程についても検討していく。また、今年度にできなかったアメリカでの資料調査を行なう。
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