2017 Fiscal Year Research-status Report
放射線被ばくに関する科学知識の生成と流通―1950年代から60年代の日本を中心に
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15K16274
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中尾 麻伊香 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (10749724)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放射線 / 原爆 / ABCC / 原水爆禁止 / 世界は恐怖する / 原爆映画 / 反核平和 / 怪獣 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は以下のように研究をすすめた。 1. 5月まではアメリカに滞在して研究を遂行した。ABCCの歴史に関して、ワシントンD.C.の米国科学アカデミー所蔵のABCC資料の調査を行った。ペンシルバニア大学のスーザン・リンディー氏と面会し、ABCCの歴史に関して研究上のアドバイスをいただいた。とりわけABCCの非治療方針について検討し、その内容について6月に京都大学、12月に同志社大学、長崎大学でそれぞれ開催された研究会で報告し、さまざまな分野の研究者から有意義なアドバイスをいただいた。 2. 1950年代の映画における放射線被ばくの描写を分析した。とりわけ亀井文夫監督の「世界は恐怖する」の描写と医科学調査との関連を調べ、この内容について8月にリスボンで開催されたヨーロッパ日本研究学会(EAJS)で報告した。 3. 小説や映画における放射線による奇形の描写を分析した。とりわけ恐竜表象の歴史において、恐竜から怪獣へと変遷していく際の核実験の影響を検討し、まとめた文章が『現代思想』2017年8月臨時増刊号に掲載された。 4. 夏の間ウィーンに滞在し、放射線医学の黎明期における医学者らの放射線影響に関する見解について、ウィーン医科大学などで資料調査を行った。また、国際原子力機関(IAEA)職員、ツヴェンテンドルフ原発稼働反対運動やオーストリアの反核平和運動に関わってきた方々へのインタビューを行い、核をめぐる問題に関する国際的な分析視角を養った。 5. 原爆の歴史をどう伝えていくかについて、ウィーンでヒロシマ・デー、ナガサキ・デーに参加、ブダペストでヒロシマ・ナガサキ原爆展を見学し、検討した。また、コロンビア大学で「よみがえる京大サイクロトロン」の上映会を開催し、日米の原爆の歴史の語られ方に関する議論を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画と比べて幅が広がった部分もあるが、研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となるため、研究内容をどうまとめていくかを考えながら、集中して進めていく。1950年代から60年代に焦点をあてて、これまで検討してきた、医学調査とジャーナリズム、ポピュラー文化における表象がどのようにリンクしているかについて分析を行う。
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