2018 Fiscal Year Annual Research Report
Creation and Consumption of the Scientific Knowledge on Radiation Exposure, Focusing on Japan in the 1950s and 1960s
Project/Area Number |
15K16274
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中尾 麻伊香 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (10749724)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 原爆 / 被爆者調査 / 長崎 / 広島 / ABCC / 長崎大学医学部 / 科学言説 / 世界は恐怖する |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は以下のように研究を進めた。 1. 被爆者をめぐる医学調査の歴史に関して、長崎、広島、京都、東京、ヒューストン(11-12月)、ワシントンD.C.(2-3月)で資料調査を行なった。前年度に引き続きABCCの非治療方針について調べるとともに、長崎大学とABCCが協力して行なっていた解剖プログラムを検討し、その協力関係の実態について調査した。これらの内容に関して、5月の日本科学史学会および11月に京都大学で開催されたワークショップで報告した。 2. 今年度から研究拠点としている長崎では、歴史研究者らと定期的に研究交流を行い、原爆・被爆者関連資料の保存状況について調査した。今年度発足した長崎ABCC研究会のメンバーとともにGHQのABCC関連資料を検討した結果、被爆者調査をめぐるABCCと長崎の行政機関や大学の協力関係を示すさまざまな資料が見つかった。これらの内容についてより広く共有・議論する研究会を3月に長崎大学で開催した。 3. これまで検討してきた医学調査とジャーナリズム、ポピュラー文化における表象がどのようにリンクしているかについての分析を行なった。とりわけドキュメンタリー映画「世界は恐怖するー死の灰の正体」を軸に、奇形をめぐる科学と表象についての検討をすすめた。この内容に関して12月に福岡で開催された原爆文学研究会で報告した。また、論文を執筆して学術雑誌に投稿した。 4. 被爆者の治療・調査にあたった医師や科学者たちがその記録をどのように残しているかについてまとめ、前年度京都大学で開催されたワークショップを基にした人文科学研究所紀要の特集号"The A-bomb and Medical History"に寄稿した。 5. 核・放射線をめぐる科学と社会の関係に関する論考をまとめた単著『科学者と魔法使いの弟子ー科学と非科学の境界ー』を青土社から刊行した。
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