2016 Fiscal Year Research-status Report
リアルタイム浮遊菌測定を用いた自然共生型博物館におけるゾーニングについての研究
Project/Area Number |
15K16277
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
間渕 創 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 客員研究員 (80601195)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リアルタイム浮遊菌測定 / 博物館 / 保存環境 / IPM / 総合的有害生物管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、博物館における従来の微生物モニタリングへ、生体蛍光を利用したリアルタイム浮遊菌測定を取り入れ、野外などの影響を受けやすい自然共生型博物館における正確性の高いゾーニング方法の確立を目指すものである。 第1年次には、博物館環境におけるリアルタイム浮遊菌測定の実施について基礎的な検証を行った。リアルタイム浮遊菌測定にあたり阻害要素の多い博物館環境においても年間を通じた測定が可能であることや、同一区画内であれば従来の培養法による浮遊菌濃度(生菌・培養可能菌種のみ)とリアルタイム浮遊菌測定による蛍光強度(すべてのバイエエアロゾル)に強い相関が見られ(r=0.58~0.92)、線形性があるが、環境が大きく異なる区画間ではこの傾きが大きく異なること等を明らかにした。 第2年次である平成28年度は、複数台のリアルタイム浮遊菌測定器を用いることで、博物館IPMにおけるカビについてのゾーニングが可能であるかについて検証を行った。実際の博物館内の各区画において、それぞれ1台ずつリアルタイム浮遊菌測定器を設置し同時に測定を行い、それぞれの区画の蛍光強度推移を比較することによる区画の分類とその特徴の把握を試みた。この結果、(1)外気の影響を受けやすい連続した区画について、外気及び各区画の蛍光強度推移に強い相関が見られ(r=0.64~0.88)、同一の環境として分類することができ、また(2)独立した清浄区画については、周辺の区画同士では蛍光強度推移の相関がr=0.73であるのに対し、周辺区画と清浄区画とではr=0.11~0.19と相関が見られず、清浄区画の独立性を確認することができた。さらに一日の内の独立区画とその周辺の蛍光強度推移を精査・分別することで(3)空調運転や施設運用、来館者等の影響を検出することができ、区画の特徴についても把握が可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3年間での遂行を計画しており、(1)リアルタイム浮遊菌測定による蛍光強度と従来法による浮遊菌濃度の相関等の基礎的な検証、(2)モデル施設における短時間的な影響を与える要因の抽出と定量化、(3)ゾーニングのパイロットテストと自然共生型博物館へ適用するための汎用性の検証の3項目をサブテーマとしている。 1年次は、計画通り浮遊菌と蛍光強度の相関について明らかにすることができた。ただし各区画間においてバイオエアロゾルの構成比が異なる場合に、蛍光強度から浮遊菌濃度の多寡を比較することができないことが明らかになったため、蛍光強度と外気指標菌濃度(Cladosporium sp.)との比較による拡散方向の検出については取りやめた。 2年次は、計画通りモデル施設において短時間的な影響についての検証とともに、上記取りやめの代替検討のため、外気の影響を受けやすく気流方向が既知の区画において測定を行い、拡散方向把握の可能性について検証を行った。また次年度予定していたゾーニングのパイロットテストについては部分的に先行して実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年次である平成29年度は、計画通りゾーニングのパイロットテストと自然共生型博物館へ適用するための汎用性の検証を行う予定である。 自然共生型博物館の本研究でのモデル施設である三重県総合博物館の施設全体においてリアルタイム浮遊菌測定によるゾーニングを実施し、汎用性や課題の検討を行う。
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Causes of Carryover |
毎年の機器保守・校正、消耗品部品の交換等を計画していたが、測定に支障がなかったことから、次年度に繰り越すこととしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した機器保守等を実施する。
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