2016 Fiscal Year Research-status Report
博物館の未同定標本を用いたきのこ分類学の推進:DNA情報の蓄積と野外調査の統合
Project/Area Number |
15K16279
|
Research Institution | Chiba Institute of Science |
Principal Investigator |
糟谷 大河 千葉科学大学, 危機管理学部, 講師 (90712513)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | きのこ / 標本 / 分類学 / 系統解析 / 新種 / 日本新産種 / 博物館 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,前年度に引き続き,国立科学博物館植物研究部,ミュージアムパーク茨城県自然博物館,および小松市立博物館の菌類標本庫に収蔵されているきのこ類標本の形態観察と,標本からのDNA抽出およびDNA情報の蓄積を行った。形態観察では,主に子実体の肉眼的特徴と,光学顕微鏡・走査型電子顕微鏡を用いた微細構造についての観察を行った。DNA抽出はCTAB・グラスミルク法により行い,DNA保存状態を評価したのち,塩基配列情報の取得を行った。また,標本調査に加えて日本各地で野外調査を行った。国内の主な調査地は山形県,福島県阿武隈高地,茨城県,栃木県,千葉県,山梨県山中湖周辺,新潟県,富山県,石川県,滋賀県である。以上の結果,514点の標本を検討し,これまでに94標本の形態観察,DNA抽出とDNA保存状態の評価を行った。これらについては,菌類の正式なバーコード領域である核ITS領域と,これに加えて核LSUの塩基配列をすでに決定済みである。
得られた試料の形態観察や系統解析に基づき,日本新産種と考えられるイッポンシメジ属菌,キヒダタケ属菌,ベニタケ属菌,チチタケ属菌などのきのこ類や,植物寄生性担子菌類などの種同定に至った。また,既知の日本産きのこ類の数種について,形態観察と系統解析の結果に基づき,隠ぺい種が含まれているなど,分類学的再検討を行う必要性があることを明らかにした。
また,日本国内の研究協力者と協議をすすめ,平成29年度の調査の具体案を作成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は前年度に引き続き,博物館に収蔵されているきのこ類の標本,および野外調査により得られた標本からのDNA情報の蓄積を進めた。その結果,複数の新種や日本新産種と考えられるきのこ類の標本を抽出することができ,今後の研究推進への具体的な方策を検討することができた。特に,イッポンシメジ属,キヒダタケ属,ベニタケ属,チチタケ属などのきのこ類や,植物寄生性担子菌類などの分類群について,未記載種や日本新産種の分類学的検討を開始することができた。これらの成果の一部については,平成29年度中に論文として出版予定である。しかし,分類学的検討が不十分な分類群もあり,今後のさらなる研究が必要である。以上のことから,全体として本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き,国立科学博物館植物研究部および日本国内のその他の博物館の菌類標本庫収蔵標本の調査を行うとともに,博物館収蔵標本の採集地において追加の野外調査を行い,新たな標本の採集を進める。これによりDNA情報の蓄積と形態観察を進め,博物館に収蔵されている未同定標本の分類学的検討を網羅的に進めていく。
|
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Circumpolar fungi of Mt. Hakusan2016
Author(s)
Taiga Kasuya
Organizer
10th International Symposium on Arctic and Alpine Mycology
Place of Presentation
Kanazawa University, Kanazawa, Japan
Year and Date
2016-08-29 – 2016-08-31
Int'l Joint Research / Invited