2016 Fiscal Year Research-status Report
弥生時代の沖積低地を対象としたジオアーケオロジー研究
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15K16282
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小野 映介 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (90432228)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遺跡 / 沖積低地 / 弥生時代 / 海面変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
東北地方を中心として,弥生時代およびその前後における古環境の復原に関わるデータを収集した. 津軽平野においては,平野中部で機械ボーリング(DSコア:掘削長約15m)を実施し,弥生時代の旧地表面を認めるとともに,当時の氾濫原の地形環境について「弥生の埋没林」との関連性の観点から検討した.また,青森平野では浜堤列に立地する沢田遺跡において機械ボーリング(ASDコア:掘削長約20m)を実施し,弥生時代における離水と浜堤の形成の状況を検討した.さらに昨年度に小川原湖東岸低地で実施した,機械ボーリングコアの分析を行い,弥生時代前後の海面変動を検討した. 以上に加えて,弥生時代前後の海面変動および浜堤の形成については,これまでに中部地方の伊勢平野で行ったボーリング資料の分析によって解明を試みた. このように,東北地方および中部地方の臨海沖積低地における調査を通じて,弥生時代における海面変動および氾濫原における堆積環境の様相が明らかになりつつある.とりわけ,これまで得られたデータは,稲作が盛んに行われるようになった時期における河川の洪水の様子や,「弥生の小海退」に関する議論に寄与することが期待できる. また,本研究を進める中で,京都盆地東縁の扇状地において弥生時代に発生した土石流の痕跡を検出することができた.既存の地形学研究では内陸盆地における土砂流動の状況については十分に解明されておらず,その点について新たな知見が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のテーマは「弥生時代の沖積低地を対象としたジオアーケオロジー研究」である.津軽平野や伊勢平野をはじめとして,弥生時代における河川の動態や海面変動に関するデータが蓄積され,従来の研究よりも高精度で地形環境を復原できる可能性が高まった点において,研究はおおむね順調に進んでいると言える.また,これまで十分に明らかにされてこなかった内陸盆地における弥生時代の河川の動態について,京都盆地を事例に検討できたことについては,当初の計画に無かった新たな進展であった.ただし,当初,メインのフィールドとして設定した鳥取県の平野についての調査が遅れており,その点において,本研究は「おおむね順調にしている」と評価される.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究計画の中で唯一遅れている鳥取県の平野を対象とした調査を早急に実施し,得られたデータと考古学的事象との比較を行いたい.それにより,「高地性集落形成時の沖積低地の地形環境の復原」というサブテーマの結論を導き出したい.また,これまで日本列島各地の沖積低地で採取したデータを比較することにより,弥生時代における河川の動態と海面変動の共通性や差異について,検討およびまとめを行う.
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