2015 Fiscal Year Research-status Report
廃止された地方鉄道から学ぶ社会的影響の実証分析と都市リノベーションの可能性検討
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15K16297
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Research Institution | Gifu National College of Technology |
Principal Investigator |
坂本 淳 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (90548299)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域公共交通 / 地方鉄道 / 交通サービス水準 / 廃止代替バス / 乗客者離れ / 交通弱者 / 廃校 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は平成12~20年度の間に廃止された地方鉄道のうち,生活交通となっていた29路線を対象として,廃止後の社会的影響を以下の面から把握することを試みた. まず,地方鉄道運行時代と廃止代替バスについて,交通サービス水準(運賃,所要時間,運行便数)と乗客者数の実績の比較を行った.比較に必要なデータは,新聞,議会議事録,関連書籍,地方公共団体の委員会資料等から収集した.その結果,半数以上の廃止代替バスにおいて,地方鉄道時代と比較して,運賃,所要時間が3割値上げ・増加されていることがわかった.また,運行便数については59%の廃止代替バスで3割以上減便されていた.さらに,廃止代替バスの95%において,3割以上の乗客者数が減少した.これより,廃止代替バスに転換したことで交通サービス水準の低下を招き,乗客者離れを生じさせていることが明らかとなった. 次に,廃止代替バスの乗客者離れの要因の把握を行った.その結果,交通サービス水準を改善させても乗客者数が減少している路線も多く,利便性とは異なる側面の問題が生じていることがわかった.想定される理由として,生徒のバス通学に対する不安から生じる利用者数の減少,利用者のニーズに基づくバス路線の高頻度な見直しが挙げられる.前者については,主な利用者である交通弱者の利用をさらに加速させることにつながる.後者については,交通空白地域をカバーするために,一度変更されたバス路線を利用者からの要望で元に戻したりするなどの変更が,結果的に市民にとって安心な公共交通サービスとして認識されなかったことが考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに,当初の計画通り,廃止された地方鉄道の社会的影響の分析を完了した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果より,地方鉄道の廃止は地域の公共交通サービスに深刻な影響を及ぼすことが示唆された.特に,子供が進学先として選択することを躊躇することは,地域の衰退を加速する恐れがあると考えられる.今後,研究計画に従い研究を進めると同時に,地方鉄道が存在することの安心感(ルートが変更しない,バスと比較して急に廃止されにくいなど)が利用者に及ぼす影響に関する研究を進めていく予定である.
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Causes of Carryover |
調査にかかるデータの購入が想定より安価であった等の理由により,次年度使用額が生じることとなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の調査にかかるアンケート調査の費用がまだ未確定であるため,十分な調査データが取得できるよう費用を配分する.
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