2016 Fiscal Year Research-status Report
廃止された地方鉄道から学ぶ社会的影響の実証分析と都市リノベーションの可能性検討
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15K16297
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Research Institution | Gifu National College of Technology |
Principal Investigator |
坂本 淳 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90548299)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地方鉄道 / 比較分析 / 国勢調査 / 客観的評価指標 / GIS |
Outline of Annual Research Achievements |
地方鉄道は単に地域の公共交通の足としてだけではなく,観光振興,まちの活性化,誇らしさ,安心感・期待感,CO2排出削減効果など,様々な便益をもたらすと言われている.一方,この「社会的な便益」を特定の路線を対象としたアンケート調査に基づき把握した研究は見られるものの,マクロな視点から定量的に評価した研究はなされていない.本研究ではこれを明らかにすることを目的とし,センサスデータを用いて本年度は以下のことを実施した. (1)国勢調査500m地域メッシュデータを活用し,指標群から地方鉄道の社会的便益の客観的評価に適切と考えられるものを選定した.まちの誇らしさ,移動制約者の足の確保,まちの活性化に関する便益については,それぞれ人口,年齢・学校別生徒,および産業別従業者数を対応させた. (2)2000年以降に廃止された地方鉄道と現存するそれのすべての鉄道駅周辺1kmをGISにより抽出し,(1)で選定したデータをインプットした.なお鉄道駅のデータは国土数値情報サービスから提供されているものをもとに修正して使用した.その後,2時点(平成12年と平成22年)の国勢調査メッシュデータを活用し,廃止された鉄道駅沿線と現存するそれとを比較することで,地方鉄道の廃止が駅周辺に及ぼした影響を定量化した. (3)鉄道廃止後に特に駅周辺の衰退が減少している路線を抽出し,都市全体の人口の変化と都市交通マスタープランに示されている都市軸や中核都市拠点をGIS上に図示し照らし合わせることで,鉄道の廃止後の人口動態を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載したように,現在までに,センサスデータにより地方鉄道の廃止が地域に及ぼした影響の客観的・定量的評価に成功した.そのため,当初の計画通り順調に研究が進んでいると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに得られた,地方鉄道の現存・廃止別にみた社会的便益の変化量の差に基づき,地方鉄道沿線の将来像の可視化を試みる. まず,評価対象とする「現存する」地方鉄道沿線の,2010年時点現在における人口,年齢などといった社会的便益に関連する指標を整理する.沿線の定義は今年度と同様,駅周辺の1kmとし,合致する500mメッシュベクターデータを抽出する.次にそれぞれの指標の将来推計を,今年度の研究成果に基づき「鉄道あり/なし」別に行う.推計に用いるデータは,今年度得られた成果である「過去10年(2000~2010年)の変化率」であり,これが将来まで続くものとするが,必要に応じて国土数値情報ダウンロードサービスで提供されている将来推計人口メッシュデータを用いてキャリブレーションを行う.最後に,鉄道が存在することにより想定される地域の姿をGISによって可視化する.ここで得られた成果は,現在経営が厳しい地方鉄道を抱える多くの地域で検討されている将来の都市交通のあり方を検討するためのコミュニケーションツールとしての活用が期待できる.
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Causes of Carryover |
国勢調査メッシュデータが割引価格で購入できたこと,データ分析が多くなったにより旅費の使用額が少額となったために残額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は,本年度得られた成果の論文投稿料,発表旅費などを予定している.
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Research Products
(1 results)