2016 Fiscal Year Research-status Report
衛星マルチセンサ画像と地理空間情報の融合による災害把握の高度化
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15K16305
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
劉 ウェン 千葉大学, 大学院工学研究科, 助教 (60733128)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自然災害 / リモートセンシング / 都市モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,撮影条件が異なる光学センサ画像と高解像度合成開口レーダ(SAR)画像を地理空間情報として融合する手法を開発し,自然災害後に短期間で得られる多様な衛星画像を用いて被害を早期に検出することである。 本年度は高解像度のALOS-2 PALSAR-2画像を用いて,2015年5月に噴火がおきた口永良部島における火山活動のモニタリングと2016年4月に発生した熊本地震における被害の検出を行った。噴火前後に撮影されたPALSAR-2強度画像の差分を用いて,火砕流による地表面の被覆変化を抽出した。さらに,上昇と下降軌道のデータに干渉解析をかけて,噴火前後における地盤変位量を検出した。 熊本地震においては,災害直後の緊急対応として,同一軌道で撮影された災害前後の3時期画像からコヒーレンスを算出し,阿蘇山付近の斜面崩壊を含めた広域な被害範囲を抽出した。また,被害が最も大きい益城町における建物の被害検出も行った。航空機レーザーで撮影したLidarデータと現地調査の結果を用いて,検出結果の精度検証を行った。 都市モデルを構築するために,橋梁がSAR画像における後方散乱モデルを分析した。東京湾にある4本の大規模橋梁と隅田川にある12本の小規模橋梁を対象とし,撮影条件による反射の違いを比較した。大規模橋梁では水面との多重反射がおき,画像に3本以上の反射が見られる。一方,小規模橋梁では多重反射が重なり,橋梁の主桁を鮮明に見られない場合もある。また,橋梁の構造が反射特性に影響することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していた異なる波長のSAR画像を用いて各土地被覆におけるマイクロ波の後方散乱係数を行った。仙台市を航空機SARセンサで撮影したLバンドとXバンドの画像を入手し,土地被覆分類を行った。しかし,解像度の差が大きく(L:3m; X: 25cm),波長による違いが判明できなかった。また,1シーンのSAR画像においては,後方散乱係数とテキスチャ情報を用いて概ねの土地被覆が分類できた。 自然災害の対応として,火山噴火(2015年口永良部島),風水害(2015年関東・東北豪雨)と地震(2016年熊本地震)における多種の被害把握を行った。火山噴火では火砕流の範囲と噴火による地殻変動を検出した。水害については,多時期画像を用いて茨城県常総市における浸水範囲変化をモニタリングできた。5mデジタル標高モデルと重ねることで最大浸水となった2015年9月11日における浸水深を推定した。熊本地震では,土砂崩れ箇所の抽出と建物倒壊率の推定を行った。被害が大きかった益城町では木造建物が密集しているため,衛星PALSAR-2画像による1棟単位の被害検出ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後では,高解像度光学衛星画像とSAR画像を併用したGIS上の3次元都市モデルの作成を行う。地震があった熊本県益城町を対象地域とする。Lバンドの衛星SAR画像では木造住宅を鮮明に捉えにくいことから,航空写真と地震前の高解像度航空機Xバンド画像(Pi-SAR2)を用いて都市モデルの構築を試みる。検証データとして,ゼンリンから建物データを購入し,建物の輪郭と高さの検出精度を評価する。さらに,地震後の航空機Xバンド画像を用いて,建物の被害判定を行う。災害後の現地調査データを用いて精度の検証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
妊娠・出産により予定していた国内・外の学会参加ができなくなり,旅費とその他(学会参加費)を使用しなかった。また,産休により,一時研究を中断しまして,データの購入を遅れた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度購入する予定であった衛星画像を新たに購入し,使用している解析機器とソフトウェアの更新を行う。また,積極的に学会に研究成果の発表と交流を行う。
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Research Products
(12 results)