2015 Fiscal Year Research-status Report
巨大地震に対応したリアルタイム地震速報システムの開発
Project/Area Number |
15K16307
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 真澄 京都大学, 防災研究所, 助教 (60456829)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 緊急地震速報 / 海溝型地震 / 東北地方太平洋沖地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年東北地方太平洋沖地震の直後に問題となった緊急地震速報の誤報を改善するために、アルゴリズムの改善を行った。誤報の主な原因は、複数の小さな地震が遠く離れてほぼ同時に発生したため、まとめて1つの大きな地震として扱ってしまったためである。
同時多発地震を適切に分離するためには、観測点密度を上げて情報量を増やすことが重要である。現在の緊急地震速報は防災科学技術研究所と気象庁の2つの地震観測ネットワークが別々に処理されているが、統合して処理することにより仮想的に観測点密度を上げることができる。本研究者は、2つの地震観測ネットワークで異なる地震計の計器特性をリアルタイムで補正する手法を開発し、統合処理によって内陸部では平均3.6秒ほど警報発表時間が早くなる事を確認した。
本研究者は、ベイズ理論を用いた同時多発地震を分離する緊急地震速報のアルゴリズムの開発に取り組んできた。東北地方太平洋沖地震直後2か月間の連続波形記録を利用して、開発したアルゴリズムを適用し、誤報の9割を減らせることを確認した。また、研究者の所属機関では、全国の微小地震観測網の連続データをリアルタイムで受信している。これらのデータを試験サーバに取り込むモジュールを構築した。現在は、新しく開発したアルゴリズムを1時間おきに実行することにより、準リアルタイムで解析することによってアルゴリズムの精度を確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、巨大地震に対する緊急地震速報の精度を向上させ、より早く正確な地震動予測を提供するシステム開発を行うことを目的としている。そのうち、巨大地震の直後の余震多発時期における適切な地震の分離に関しては、以前より取り組んでいたベイズ理論を用いたアルゴリズムの実用化を行った。2011年東北地方太平洋沖地震直後のデータを用いて、十分な精度があることを検証した。さらに全国の微小地震観測網の連続データを利用して、準リアルタイムで解析するシステムを構築した。
本研究者は、これまでに災害に関連する膨大な情報(災害関連ビッグデータ)を1つのインターフェースで統合的にモニタリングするシステム(Harmonia)の構築を進めている。このシステムでは、気象庁の提供する緊急地震速報や降水量の情報、波浪情報、地質情報など様々な自然災害に関する情報をリアルタイムで表示することができる。本研究により精度の高いアルゴリズムを構築した際には、結果を同一のインターフェースで表示させることにより、研究成果をより分かりやすく視覚化することができる。
震度予測の精度を向上させるためには、地盤増幅の情報精度を高める必要がある。そのため、堆積地盤上での地盤増幅情報の抽出を目的として、連続地震観測を開始した。2015年度には地震計の設置を行い、データを数カ月間蓄積したのち、地震波干渉法を利用して堆積地盤構造の推定を試みる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
緊急地震速報の精度向上には、その元になるデータ(P波到着時刻)の精度を高める必要がある。現在は、波形の平均振幅を利用した短時間平均と超時間平均の比(STA/LTA)によるトリガ検知を行い、P波到着時刻を推定している。近年、kutorsisを利用することにより、トリガ検知能力が大幅に向上することがヨーロッパのグループによって発表されている(例えば、Baillard et al., 2014, BSSA)。この手法を東北地方太平洋沖地震直後の連続波形記録に適用し、トリガ検知の精度を従来の手法と比較する。検知能力の向上が確認できれば、プロトタイプシステムのトリガ検知に利用する。
2015年度には、ペルーで発生した遠地地震や北海道や小笠原諸島などの島嶼部の地震など、観測点分布に偏りがある場合に構築したアルゴリズムが適切に働かないケースが確認できた。本年度は、観測点の選択方法を改善したり、遠地地震対策を導入することにより、これらの地震での誤報を改善させる予定である。
また、2016年4月に発生した熊本地震では、大分や熊本といった離れた地域で多数地震が発生することにより、緊急地震速報がうまく働かないケースがあった。これは、2011年東北地方太平洋沖地震直後の誤報と同じ状況である。気象庁との共同研究を継続することにより、2016年熊本地震直後の地震波形データを利用して、震度予測の精度向上を行う予定である。
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Causes of Carryover |
海外出張のための所内経費を獲得したため、予定していた海外出張の支出が不要となった。 現在投稿中の論文が複数あるが、査読に時間がかかっているため、27年度中に投稿費を支払う事が出来なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度中に査読の終わらなかった論文の投稿費として使用する。 また、テストサイトを設けて地震計を設置することにより、地震記録から表層地盤増幅を評価して震度予測の精度向上を検討する。
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Remarks |
一般向けの緊急地震速報を発表した地震について、地震動の特徴や様々な緊急地震速報の手法の解析結果をウェブサイトに公開している。
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[Presentation] 山田真澄2015
Author(s)
実用地震学:揺れる前に地震を知らせる
Organizer
第6回緊急地震速報利用者懇談会
Place of Presentation
東京
Year and Date
2015-11-20 – 2015-11-20
Invited
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