リアルタイム津波予測に向けた沿岸の津波伝播特性の補正法の高度化

2015 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K16309
• Research Institution: Japan, Meteorological Research Institute
• Principal Investigator: 対馬 弘晃 気象庁気象研究所, 地震津波研究部, 研究官 (00589864)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: リアルタイム津波予測 / 津波増幅率 / 近地津波 / 固体地球物理学 / 自然災害

Outline of Annual Research Achievements

リアルタイム津波予測の精度を高めるには，非線形効果が強い沿岸付近における津波伝播過程の寄与を，非線形津波数値シミュレーションにより求める必要がある．しかしながら，リアルタイムに行うには計算コストが高い．そこで本研究では，短時間かつ簡便に沿岸の津波の伝播特性を津波予測解析に導入するための手法の開発を行う．
平成27年度は，沖合から海岸（以下，サイトという）へ津波が伝わる際の波高増幅の周波数特性を調べた．まず，系統的な解析を行えるようにするため，多数の津波数値計算を実施した．具体的には，千島・日本海溝沿いのプレート境界に沿って，位置やマグニチュードを変えながら多数の地震断層を並べ，各断層からの津波伝播シミュレーションを実施し，北海道から東北地方にかけての港湾地域についての沖合・海岸の津波波形を計算した．このとき，津波周波数特性に強く影響する湾の形状の再現度を高めるため，地形サイズは最小50 mとした．また，非線形効果の影響を調査可能にするため，シミュレーションは線形・非線形方程式の両方について実施した．沖合と海岸の津波波形のスペクトル比を求めた結果，スペクトル形状は大局的には類似するが，パワーは波源毎に大きくばらつく場合もあることがわかった．今後，周波数特性を考慮した増幅率を設計する際に，こうした知見を考慮する必要があるだろう．

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初予定通り，多数の津波伝播数値計算を行い，次年度以降の一連の解析を行うためのデータセットを準備することができた．また，数値計算で得られた津波波形を用いたスペクトル解析により，津波波高の周波数特性に関する知見を得ることができた．

Strategy for Future Research Activity

平成27年度に得られた津波高増幅率の周波数特性に関する知見を，リアルタイム津波予測に反映・活用するための開発に着手する．具体的には，数値計算実験で求めた多数ケースの津波高増幅率（津波波高スペクトル比）を用い，それらを近似したデジタルフィルタ（時間領域で適用可能）を設計する．こうしたフィルタの設計方法は，地震動即時予測の研究分野では，地盤応答のリアルタイム補正をねらいとして提案されている．本研究では同方法論を津波に適用し，予測対象サイトにおける津波高増幅率のリアルタイム補正を試みる．平成27年度の解析において，津波高増幅率の周波数特性は，ややばらつく傾向がみられたため，単一のデジタルフィルタによる近似では，波高予測精度が十分ではない可能性もある．そうした場合は，波源パラメータ等によって場合分けをする等して，予測精度を高めるための工夫を行う．

Causes of Carryover

関連分野の研究者との打合せを実施する予定であったが，先方との都合がつかなかったため．

Expenditure Plan for Carryover Budget

研究を円滑に進めるうえで関連書籍を購入する必要が生じたため，物品費として使用する予定である．