2015 Fiscal Year Research-status Report
水蒸気の起源解析モデルを用いた梅雨期豪雨災害の規模推定に関する研究
Project/Area Number |
15K16310
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田上 雅浩 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (20735550)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 降水の安定同位体比 / 日本 / 同位体領域気候モデル / データ同化 |
Outline of Annual Research Achievements |
梅雨期における豪雨は、熱帯や東シナ海を起源とする水蒸気が強い南西風によって持続的に梅雨前線帯に流入することによりもたらされる。しかしながら、どの海域で蒸発した水蒸気が、どのくらい降水システムに熱や水を供給しているのかは明らかにされていない。そこで、本研究課題では、水の相変化によって変化する降水の安定同位体比と最新の水蒸気の起源解析モデルを利用して、各起源域から蒸発した水蒸気が梅雨期における降水システム(大きさ100km以上)へどのくらい水蒸気や熱を輸送しているのかを調べる。 観測された降水の安定同位体比をデータ同化した場合としない場合とで、同位体領域気候モデルに与える影響に違いがあるのかを確認するため、今年度は、同位体領域気候モデルの降水の安定同位体比の再現性を確認した。再現性を確認するに当たり、空間解像度を10km, 30km, 50kmと変えて再現実験を行った。その結果、どの実験でも、東日本・太平洋側における1月の降水の安定同位体比を過小評価していることがわかった。この過小評価は、2013年1月15日ごろに発達した爆弾低気圧による降水量を過小評価していたためと考えられた。夏季に関しては、どの解像度で行った再現実験で行った結果の間に大きな違いはなかったが、9月の台風に関連したイベントの降水の安定同位体比に関しては、空間解像度が最も高い10kmの実験の再現性が最も良かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究成果によって、同位体領域気候モデルによる日本において観測された降水の安定同位体比の検証が終了し、水蒸気トレーサー実験による水蒸気の起源解析の準備を進めている。現在のところ、境界条件の準備が整ったため、来年度以降は、これらデータを用いて、水蒸気起源の第一推計を行うことができるようになった。申請時の計画では、今年度はデータ同化変数の追加を予定していたが、モデル検証と水蒸気トレーサー実験の進捗が想定より進んだため、研究課題申請時とは研究の順番を変えた。今年度は、4件の研究発表と1件の国際学会を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、用意した水蒸気トレーサー実験の境界条件を用いて、同位体領域気候モデルによる水蒸気起源の推定を行う。これにより、研究計画達成に向けた解析手法を考察することができ、データ同化していない場合における水蒸気起源の第一推計値を推定することができる。同時に、モデルにデータ同化変数を追加することを行う予定である。
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Causes of Carryover |
本研究手法を海外において適応することができるかを検討するため、海外での降水の安定同位体比の観測研究を考えている。観測研究を実施するに当たり、数回の国内での研究打ち合わせを行う必要がでてきたため、旅費が発生し、その結果、当初予定していたワークステーションおよびデータデバイスの購入を翌年度にずらすため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ワークステーションおよびデータデバイスの購入を検討している。
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