2016 Fiscal Year Research-status Report
水蒸気の起源解析モデルを用いた梅雨期豪雨災害の規模推定に関する研究
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15K16310
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田上 雅浩 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (20735550)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 水蒸気起源 / 水同位体比 / データ同化 / 日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①計算効率の上昇とデータ出力削減を目的としたモデルへの水蒸気トレーサーの追加、②起源域から蒸発した水の同位体比計算スキームの実装、③データ同化なしの場合における日本における水蒸気起源の推定に取り組んだ。水蒸気の起源解析は、1回のシミュレーションにつき、2つの起源域から蒸発した水蒸気をトレースすることがでるが、複数の起源域で計算する場合、その計算効率や出力データの容量が問題となる。そこで、モデルを改良し、1回のシミュレーションにつき複数の起源域から蒸発した水蒸気をトレースできるようにした(①)。同時に、複数の起源域から蒸発した水蒸気の量だけでなく、それが持つ同位体比を計算できるようなスキームを開発した。水蒸気の同位体比は、雨を降らせるほど低くなる性質があるため、凝結に伴う潜熱開放による熱の変化量とその水蒸気の同位体比との関係を調べることができるかもしれない(②)。最後に、データ同化の有無の影響を調べるために、データ同化なしの場合における日本域の水蒸気起源を推定した。初期解析の結果、夏季は太平洋やインド洋、冬季は日本海、東シナ海、太平洋北西部から蒸発した水蒸気が降水に大きく寄与することがわかった。既往研究の結果も踏まえ、日本における降水起源についてレビューをまとめた。また、特に冬季を中心に、降水同位体比と起源との関係を調べたところ、気圧配置の変化に伴って同位体比の値や卓越する水蒸気起源の変化を明らかにし、国際誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
データの詳細な解析やモデルの大幅な改良を進めることができた。これにより、今年度は国内誌に1本のレビューが採択され、また冬季を対象とした水蒸気起源の解析結果を国際誌に投稿した。 今年度は特に、起源域から蒸発した水蒸気の同位体比を計算できるスキームを導入できたのが大きな成果の1つである。これにより、本研究課題提出時に想定していた以上の情報を抽出できる可能性があるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、データ同化変数に降水の同位体比や水蒸気起源に関する変数を追加し、降水同位体比のデータ同化を踏まえた領域気候モデルによる理想化実験と実際のデータを用いたデータ同化実験を行う。
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Causes of Carryover |
今年度購入を計画していた大規模データシステムを購入を予定し予算を積立ていたが、ノートPC故障により、新規PCを購入し、予算に差額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
差額分と次年度予算とを合わせて大規模データシステムの購入を検討している。
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