2015 Fiscal Year Research-status Report
血中循環腫瘍細胞センシングを行うマイクロ流体デバイスの開発
Project/Area Number |
15K16320
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
田畑 美幸 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 日本学術振興会特別研究員(PD) (00636839)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイオセンサ / 血中循環腫瘍細胞 / 乳がん |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、電界効果トランジスタの原理を用いた超高感度電位計測バイオセンサにより血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells: CTC)の分離検出と核酸解析を行う小型・可搬型デバイスの創製に関する研究を行う。 CTCとは、原発腫瘍組織から遊離し血管内に侵入した細胞のことであり、わが国の死因第一位である悪性新生物つまり悪性腫瘍の遠隔臓器への転移の主要因である。血管内へ浸潤するがん細胞の大半は自己免疫系により死滅するが、ごく一部はCTCとして血液内を循環し標的臓器の毛細血管でトラップされ、基底膜を破壊して血管外へ遊出し、転移巣を形成すると考えられている。近年では、血液中のCTCの解析ががんの病態予測において有用だと認識されており、転移性乳がん、転移性結腸直腸がん、転移性前立腺がんにおける予後予測のバイオマーカーとしての有用性が示されている。血液10 mLあたりに、赤血球や白血球といった血球細胞は10の7乗から10乗個のオーダーで存在するのに対しCTCは数から数百個程度しか存在せず、一般的な遠心分離法で分画化することは困難である。また、CTCが血球細胞より大きいことを利用したサイズによるフィルタリングを利用したCTC分離分析装置は既に製品化されているが(例えばCellSearch(Veridex社))、装置や検査費用が高額であり、分離後のCTCの特性解析には不向きであるなどの課題が指摘されており、これらの製品に代わる新たな検出原理を有する分離検出デバイスが求められている。 プローブ分子を固定化したセンサ表面にCTCを固定化し、CTCに由来するシアル酸負の電荷を有するため腫瘍細胞表面のシアル酸発現量の違い及びその中に含まれる核酸の解析を行うことにより、がんの早期診断デバイスの創製を目指すとともに、CTCに関する新たな生理機能を探究する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル系としてまずは培養細胞を用いてがん細胞を電気的に検出するデバイスの開発を試みた。ターゲットであるヒト乳腺がん細胞のMDA-MB-231(MM231)および正常ヒト乳腺細胞のMCF-10Aに関してゼータ電位を計測したところ、MM231の方が負の電荷を有していることがわかり、正常乳腺細胞との違いは1 mV程度であることが明らかとなった。また、10の7乗個あたりの細胞表面のシアル酸発現量を定量した結果、MCF10Aでは検出に有効な数字が得られなかった。これらの結果から両者のシアル酸発現量の違いがゼータ電位の違いをもたらしていることを見出した。 バイオセンシングにおいて、センサ表面の機能化および最適化は、高い信号/雑音(S/N)比を実現する上で欠かせない。シアル酸由来の負電荷により変化する界面電位すなわちがん組織の有無を、電位差として判断するためプローブ分子の検討を行った。MM231およびMCF10Aを、プローブ分子を固定化したセンサ表面上に播種し、その相互作用を電位計測にて確認した。その結果、フェニルボロン酸(PBA)誘導体を固定化したセンサを用いた場合、細胞数に応じた電位応答を示し、MM231においてMCF10Aより多く存在しているシアル酸由来の負電荷を検出可能であることが分かった。 これらの成果から、初年度は電極の設計と特異的分子認識反応を起こす電極表面の構築を目標としていたため、おおむね順調な経過といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の評価基板において、PBA誘導体とシアル酸の相互作用を用いた基礎的な検出原理を確立した。今後は、プローブ分子の固定化濃度やスペーサーの長さを最適化した後、検出限界、ダイナミックレンジ等のバイオセンサとしての機能評価を行っていく予定である。本電位計測方式の一つの利点として、電位計測結果は電極面積に依存しないということが挙げられる。ターゲット細胞と同程度の大きさを有するウェル型のセンサを微細加工技術により集積化しデジタルカウンティングによりがん細胞の定量化を達成することを目標としている。 本研究では、FETとマイクロ流体デバイスを利用したCTCの分離検出デバイスの構成を確立し、CTCの分離検出とその核酸解析を行う評価系の創製について提案する。電気化学的な計測法は非標識で蛍光ラベル等を必要としないため光学的検出装置が不要である他、半導体技術を駆使してセンサ部を高度に集積化できることから、システムの小型化・高感度化に有利である。FET延長ゲート表面でCTCを高S/Nに検出するために電位計測で得られた結果をフィードバックし、今後は、ゲート表面に捕捉したCTCを融解し、放出された核酸を電気的に簡易解析してがんの原発部位などの情報を得るため、核酸センシング部位を有するマイクロ流体デバイスの創製にも取り掛かる。エレクトロニクスと医療・生命科学分野の融合という観点において特徴的である本研究は、一見対称的な学問領域の技術・概念を融合することでさらなる展開として幅広い医療分野に貢献していくと考えられる。
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Causes of Carryover |
今年度予定していたセンサ表面の機能化の検討において、試薬や消耗品の購入が少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度、比較的高価な生化学試薬やマイクロ流路作製のための試薬・器具・基板・消耗品の購入に使用する。
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[Presentation] Real-time monitoring and detection of primer generation-rolling circle amplification of DNA using an ethidium ion selective electrode2015
Author(s)
Ayaka Seichi, Nanami Kozuka, Yuko Kashima, Miyuki Tabata, Tatsuro Goda, Akira Matsumoto, Naoko Iwasawa, Daniel Citterio, Yuji Miyahara, Koji Suzuki
Organizer
The 16th Beijing Conference and Exhibision on Instrumental Analysis (BCEIA2015)
Place of Presentation
Beijing, China
Year and Date
2015-10-27 – 2015-10-31
Int'l Joint Research
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