2016 Fiscal Year Research-status Report
虚血性疾患治療に向けた、皮下脂肪組織を活用する新たな血管再生技術の開発
Project/Area Number |
15K16329
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
高田 仁実 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 創薬基盤研究部門, 研究員 (80641068)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細胞移植治療 / 脂肪組織由来細胞 / 下肢虚血 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細胞移植による虚血性疾患治療の効果向上を目指し、脂肪組織由来細胞から血管形成能の高い細胞を同定することを目的としている。昨年度は、細胞の培養条件検討を行い、ヘテロな脂肪組織由来細胞の集団から血管形成能が高い細胞を選択培養する技術の確立に成功した。そこで今年度は、RNA-seqを用いて、血管形成能が高い細胞と低い細胞との比較による性質解析を行った。その結果、血管形成能が高い細胞群では、組織修復に必要なマトリックスメタロプロテアーゼやコラーゲン、修復応答に関わる分泌性因子、細胞遊走に関わる因子の発現が上昇していることが明らかとなった。また、GO解析の結果から、血管内皮細胞の分化に関わる遺伝子群の発現が増加していることが示され、遺伝子発現状態からも本細胞が高い血管形成能を持つことが示唆された。現在、細胞の性質解析の結果をまとめた論文を準備中である。 さらに、下肢虚血モデルマウスへの細胞移植実験を行い、その治療効果を検証した。その結果、高い血管形成能を持つことが予想された細胞は、下肢虚血による壊死を抑制する効果が高い傾向にあることが示された。移植部位の切片を作成し、抗体染色を行ったところ、移植細胞の周囲に血管が形成されているとともに移植細胞自身が血管を構成する様子が観察された。現在、マウスのn数を増やしてその治療効果の優位性を検証するとともに、その他の疾病モデルマウスを用いた移植実験を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞の性質解析の研究においては論文投稿を準備中であり、おおむね当初の計画通り研究が進んだ。しかしながら、所属機関の異動にともない、マウスを用いた実験は一時中断を余儀なくされたため、下肢虚血モデルマウスを用いた移植実験がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度行ったRNA-seqの結果から、異なる条件で培養した脂肪組織由来細胞は、遺伝子発現状態に違いが見られることが示されたとともに、さらに同じ条件で培養した細胞群の中にも、それぞれ性質の異なる細胞が存在することが明らかとなった。そこで来年度は、それぞれの細胞の性質をより詳細に解析することにより、脂肪組織由来細胞のheterogeneityの実体を明らかにすることを予定している。また、下肢虚血モデルマウスを用いた細胞移植実験のn数を増やすとともに、創傷治癒モデルなどその他疾病モデルマウスを用いた治療効果の検証を予定している。
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Causes of Carryover |
当初予定していなかったが、今年度に所属研究機関を異動することが決定した。このため、マウスを用いた実験を中断せざるを得なくなり、今年度遂行する予定であった動物実験およびマウス組織切片の抗体染色などに使用する費用を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
脂肪組織由来細胞の治療効果を検証するため、下肢虚血モデルマウスに加えて、創傷治癒モデルマウスなどその他疾病モデルマウスに対する移植実験を計画している。また、今年度行ったRNA-seqの結果をまとめた論文を準備しており、論文発表および学会発表を予定している。
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Research Products
(1 results)