2015 Fiscal Year Research-status Report
血液腫瘍患者に対するQOL向上に主眼を置いたリハビリテーションプログラムの開発
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15K16355
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
石井 瞬 長崎大学, 病院(医学系), 技術職員 (20437859)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 身体活動量 / QOL / 全身倦怠感 / 精神症状 / 運動機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度において,身体活動量を含めて評価が実施できたのは血液がん患者26名,固形癌患者16名の計42名であった.血液がん患者,固形癌患者それぞれの入院時および退院時の1日平均歩数と運動機能(握力,膝伸展筋力,10m歩行時間),ADL(mFIM),全身倦怠感(CFS),不安・抑うつ(HADS),運動セルフエフィカシー,QOL(EORTC QLQ c-30)との相関関係について調査を行った.統計解析にはSpearmanの順位相関を用いて,有意水準は5%未満とした. 入院時において,血液がん患者の1日平均歩数は,握力(p=0.0025,r=0.581),mFIM(p=0.0209,r=0.437)と有意な正の相関を認め,10m歩行時間(p=0.0001,r=-0.783),CFSの精神面(p=0.0296,r=-0.427)と有意な負の相関を認めた.固形癌患者の1日平均歩数は,mFIM(p=0.0121,r=0.671)とのみ有意な正の相関を認めた.また,退院時において,血液がん患者の1日平均歩数は,握力(p=0.0359,r=0.664),QOLの役割面(p=0.0467,r=0.600)と有意な正の相関を認め,10m歩行時間(p=0.0105,r=-0.809),CFSの精神面(p=0.0461,r=-0.601)および総合面(p=0.0133,r=-0.747)と有意な負の相関を認めた.固形癌患者の1日平均歩数は,他の評価項目と有意な相関関係は認められなかった. しかし,運動セルフエフィカシーにおいては,固形癌患者および血液がん患者両者とも,入院時・退院時の他の評価項目との相関関係は認められなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
身体活動量の評価において,入院期間中に測定機器の装着し忘れや中止の希望が出現したため,評価が実施できた症例数は予定より減少している.しかし,評価できた症例数であっても,血液がん患者において,入院時および退院時の運動機能や全身倦怠感,精神症状が身体活動量低下の要因になっていること,そして,退院時において身体活動量の低下がQOL低下の要因になっている可能性が示唆された.一方,固形癌患者においては同様の傾向は認められず,血液がん患者においてのみ,身体活動量と運動機能や身体・精神症状およびQOLとの関連が明らかになっている.運動セルフエフィカシーとの関連性は認められなかったが,血液がん患者における身体活動量の重要性が推察されたため,平成27年度における本研究の目的は概ね達成できたと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り,固形癌患者よりも血液がん患者は,入院時および退院時の身体活動量が運動機能や身体・精神症状,QOLと関連することが明らかとなった.運動セルフエフィカシーとの関連性は認められなかったが,運動機能や全身倦怠感,精神症状を改善させ,身体活動量を向上させることが,QOL向上に寄与すると考えられる.研究計画の介入方法として取り入れていた低強度運動やフィードバックは上記の問題を解決し,QOLを向上させる可能性があると考えられるため,計画通り血液がん患者に対する低強度運動およびフィードバックの効果を検証する予定である. しかし,評価実施可能な症例数が予定よりも減少しているため,3群のRCTを実施することは困難と考えられる.そこで,今後は全ての血液がん患者に低強度運動およびフィードバックを行い,平成27年度に評価可能であった血液がん患者をコントロール群,H28年度以降の血液がん患者を介入群として2群で比較するヒストリカル・コントロール試験に変更する.
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Causes of Carryover |
評価可能であった症例が予定より減少し,一部の評価機器が当部現有の個数で十分であり購入の必要がなかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後,介入研究に変更となるため,症例数に応じて評価機器の追加購入を検討.購入が必要なければ学会発表の旅費等に充填する予定.
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