2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K16373
|
Research Institution | Health Science University |
Principal Investigator |
村松 憲 健康科学大学, 健康科学部, 准教授 (00531485)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 糖尿病 / 運動野 / 錐体路 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度はstreptozotocinを腹腔内に投与することで1型糖尿病を発症させたラットの運動野の体部位再現の変化を調べることを目的に実験を行った。実験はケタミン麻酔下で維持したラットの大脳皮質を露出させ皮質内微小電気刺激によって誘発される身体運動を指標に脳地図を作成した。その結果,糖尿病発症後わずか4週間のラットにおいて対照群に比べて後肢及び体幹領域を中心とした運動野の縮小が観察された。さらに,下肢・体幹領域は病期に依存して縮小し続け,23週間後には対照群の約1/3まで面積が減少した。一方,前肢領域は糖尿病発症後4週間や13週間では変化が認められなかったが,23週間後にはわずかに縮小した。また,運動を誘発するために必要な電流閾値は体幹領域においてわずかな上昇が観察されたが,それ以外に変化は観察されなかった。次に各群のラットの末梢神経伝導速度を計測すると,病期4週間では伝導速度低下は観察されず,病期13週間以後の動物では運動,感覚神経伝導速度の低下が認められた。なお,伝導ブロックを起こしている個体は存在しなかった。 以上の結果は糖尿病による運動野の縮小は主に後肢・体幹領域に観察され,しかも,それは伝導速度低下といった末梢神経障害の発症よりも早期に生じていることを示している。これは運動野の萎縮は末梢神経障害などに誘発されて二次性に生じるものでなく,高血糖やインスリン欠乏などが中枢神経系に直接的な影響を与えた結果であると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では糖尿病発症後13週間と23週間のラットのみを対象に実験を行う予定であったが,糖尿病性の末梢神経障害の影響を排除できる超早期(病期4週間)のラットに関する検討も追加したため,実験計画よりも遅れることとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は実施の遅れている錐体路細胞の軸索変性に関する形態学的,電気生理学的解析を行う予定である。具体的に述べると,糖尿病ラットの運動野の前肢もしくは後肢領域に順行性トレーサー(デキストラン)を注入し,脊髄内における神経終末の分布を調べる実験を行う。さらに,脊髄を銀ボール電極で電気刺激して,逆行性に発火する錐体路細胞の活動電位を大脳皮質運動野より記録し,錐体路の伝導速度を計測して糖尿病による錐体路軸索の機能的な変化を調べる予定である。
|