2015 Fiscal Year Research-status Report
脳損傷後の神経回路再建および臨床応用への統合的研究
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15K16377
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
田中 貴士 近畿大学, 東洋医学研究所, 助教 (30734694)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脳損傷 / 持続的運動 / 神経再生 / 運動機能回復 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経は、軸索伸長阻害因子の存在や軸索自体の伸長能力の欠如によって、一旦損傷を受けると回復が困難であることが知られている。本研究では、上記要因に関与することで軸索伸長を負に制御しているチロシン脱リン酸化酵素SHP-1の抑制に加え、神経再生を促しうる運動を行うことで、脳損傷後の神経再生がより強化されるか否かを検証している。 本研究では、脳損傷モデルマウスの非損傷側大脳皮質および皮質脊髄路の代償的な神経再生に着目している。平成27年度はまず、非損傷側大脳皮質における変動因子を経時的に探索した結果、損傷早期にPro-inflammatoryサイトカインが増加した後、Anti-inflammatoryサイトカインが増加することが示された。また、軸索伸長の重要なシグナルとされる脳由来神経栄養因子BDNFの発現が徐々に減少することを見出した。そこで、抗炎症効果があると報告されているRunning wheelを用いた持続的な運動介入を、脳損傷の2週間前から脳損傷後4週間にわたって実施した。まずは、持続的運動が脳損傷後の神経再生に効果的であったか評価するため、非損傷側の皮質脊髄路を順行性トレーサーBDAによって標識し、軸索の側枝形成を評価した。その結果、頚髄における皮質脊髄路の側枝の数は、非運動群と比較して運動群において顕著な増加が認められた。また、脳損傷後から4週間にわたり前肢の運動機能を評価した結果、非運動群より運動群の回復が良好なことが示された。さらに、Pro-/ Anti-inflammatoryサイトカインについては解析中であるが、運動群においてBDNFの発現が減少に転じないことやSHP-1の発現が低下傾向にあることを見出す事が出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、Running wheelによる持続的な運動は、脳損傷後の代償的な神経再生を促すことで運動機能の回復を向上させることを明らかにできた。さらに、非損傷側大脳皮質におけるPro-/ Anti-inflammatoryサイトカインおよびSHP-1の発現変動と運動が関連性を示唆する結果も得ている。これらは、初年度の当初計画にほぼ沿った内容に関する成果であり、平成28年度以降に計画に沿ってさらに詳細な解析を行う予定である。以上より、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、これまでの研究成果を元にさらに詳細な運動介入による軸索伸展効果の分子機序の解明を行う。その為にSHP-1 KOマウスによる解析を進める予定である。 運動介入により発現低下を示したSHP-1の機能解析のため、SHP-1 KOマウスを用いて SHP-1の遺伝学的な欠損がさらなる神経再生を促進しうるか否か、脳損傷後の運動介入や免疫組織化学的解析およびマウスの行動解析などの手法だけでなく、初代培養神経細胞を用いた軸索伸展効果の検討などを行う。
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Causes of Carryover |
ノックアウトマウスの搬入時期が不明であったため、必要であった購入費用が未使用である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ノックアウトマウスが搬入され次第、未使用金は使用する予定である。
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Research Products
(4 results)