2015 Fiscal Year Research-status Report
求心路遮断性疼痛における感覚・運動表象の定量化とバーチャルリアリティ訓練の効果
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15K16381
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
大住 倫弘 畿央大学, 健康科学部, 助教 (70742485)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 求心路遮断性疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では,求心路遮断性疼痛を有する者の運動表象あるいは感覚表象を定量的に評価し,それらと疼痛との関係を明らかにすることを計画していた. 両手干渉課題から得られるOvalization Indexという指標を用いて,求心路遮断性疼痛患者の運動表象を定量化することに成功し,9名の求心路遮断性疼痛患者での計測を終え,定量化された運動表象と疼痛との間に有意な相関関係があることを明らかにした.つまり,運動表象が残存している求心路遮断性疼痛患者は,疼痛が軽度であるということを明らかにした.さらに,この定量化された運動表象は,患者自身が語る主観的な運動表象のデータと乖離しており,主観的に語られる運動表象と疼痛との間には有意な相関関係が認められなかった.このことは,定量化された運動表象と疼痛との関係を明確にするだけではなく,臨床現場における運動表象の定量的評価の意義の大きさを示す結果となった.なお,運動表象と求心路遮断性疼痛との関係を示した結果は,国際雑誌Neuroscience Lettersに掲載された. 一方で,感覚表象の定量的評価に関して,その実施方法と解析手法を確立し,健常者での計測も終了した.そして,求心路遮断性疼痛患者数名にも実施したが,感覚障害が重度であること,手指の関節拘縮があることが原因で課題そのものが実施困難な症例が存在した.このような問題点を解決するために,現在では課題を簡略化し,感覚障害が軽度である脳卒中片麻痺患者での計測を6名実施した.その結果,健常者とは感覚表象が有意に変容していることが明らかとなった.この結果は,求心性入力に何らかの問題が生じると感覚表象が変容することを示唆するものである. 今後は,これらの定量化された運動および感覚表象がリハビリテーションによって改善するのか,そしてその改善は疼痛改善に繋がるのかを明らかにする予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定してた運動表象および感覚表象の定量的評価方法の確立に成功した.当初の予定では20名ほどの被験者数を想定していたが,実際にリクルートすることができたのは9名であった.その中でも運動表象と疼痛との間に強い相関関係が認められたことから,両者には密接な関係性があることが明らかとなった. また,平成28年度に計画しているバーチャルリアリティを用いたニューロリハビリテーションの効果検証に関して,バーチャルリアリティーシステムそのものは完成しており,既に複数人実施済みである.今後は,運動表象および感覚表象がバーチャルリアリティーを用いたリハビリテーションによって改善するのかを検証するとともに,それと同時に疼痛も軽減するのかを検証していく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,既にシステムが整備されているバーチャルリアリティを用いたニューロリハビリテーションの効果検証を実施する予定である.そして,バーチャルリアリティーリハビリテーションによって改善するであろう運動・感覚表象の改善と疼痛の改善との間に有意な相関関係が認められるのかを調査する. また,数名の求心路遮断性疼痛患者に協力してもらい,バーチャルリアリティーリハビリ中の脳波計測を実施し,どのような脳活動が得られているのかを調査する.さらには,その脳活動の分析に基づいて,バーチャルリアリティーリハビリによって効果が得られた症例と効果が得られなかった症例の相違点を分析し,さらなるシステム改良を行う予定である.
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Causes of Carryover |
宿泊費を想定していた旅費が必要なくなったことが1度生じたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の論文作成に必要な英文校閲費に使用する予定である.
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