2015 Fiscal Year Research-status Report
脳可塑性への働きかけに基づく言語障害リハビリテーション
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15K16386
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
岩渕 俊樹 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 流動研究員 (20711518)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ニューロフィードバック / fMRI / rTMS / 文処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は言語機能の改善・向上に関して、fMRIニューロフィードバックおよび反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の効果を検証することを目的とする。現在までに、左下前頭回を関心領域としたfMRIニューロフィードバックのパイロット実験を行い、フィードバック情報に基づいて脳活動の活動変調が可能なことを確認した。さらに、明示的な課題なしに活動量のフィードバックのみを行う条件、および特定のカテゴリ(例.野菜、動物など)に含まれる語を自由想起する課題を実施しているときの脳活動をフィードバックする条件を設定し、それぞれの条件下における活動変調について検討したところ、後者の条件でより効果的に訓練時の脳活動を自己調節できることを示した。また、ニューロフィードバックの効果を検証するためには、訓練セッションの前後でさまざまな言語課題を行い成績の変化を比較する必要がある。本年度はこれらの課題群、およびそこで用いる刺激セットの作成を行った。さらに、以上のパイロット実験に加え、fMRIニューロフィードバック、およびrTMSのターゲットとする領域を同定するための2つのfMRI実験を実施した。前者の実験では、19名の健常成人を対象に、複雑な構文処理の負荷が文脈情報によって軽減されるときの脳内メカニズムを検討した。後者のfMRI実験はまだ進行中であるが、すでに11名の健常成人のデータを取得した。意味を含む文(例.官僚を会長が殴った。)と無意味文(例.AAをBBがVした。)を提示した比較を行い、複雑な統語構造を持つ文処理が意味的な内容によって促進されるメカニズムについて検討中である。これらの実験によって同定された領域をターゲットとしてニューロフィードバックまたはrTMSを行うことにより、文処理の負荷を効率的に軽減させることが可能になるのではないかと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
fMRIニューロフィードバックの実験系を構築し、パイロットデータを取得することが本年度の主な目的であった。これまでに左下前頭回(いわゆるブローカ野)を関心領域として脳活動の自己調節が行えることを確認し、また必要な刺激セットの作成を行うなど、ニューロフィードバック研究についての準備は適切に進んでいる。また、当初は事前に決定した脳部位を関心領域とすることを計画していたが、より効率的なパラダイムを作成するため、関心領域を決定するためのfMRI実験を新たに計画し、そのデータ取得・分析を進めることができた。この点は当初の予定以上に進展が見られたと考えられる。 一方、計画では平成27年度中に健常者を対象としたTMS実験を実施する予定であったが、こちらは関心領域を決めるためのfMRI実験を行うにとどまった。これは上に述べたように、より効率的なリハビリ開発のために新規なfMRI実験を行って関心領域を定めるよう方針を変えたことによる。以上からニューロフィードバック研究については当初の計画以上の進展が見られたが、TMSについてはやや遅れが見られる。しかし全体としてはおおむね順調に研究が進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
関心領域を決定するための2つのfMRI実験については、データが十分でないものに関しては引き続き実験を行い、データ取得および分析を行う。その後、作成した課題群を用いて健常者を対象にfMRIニューロフィードバック実験を行い、訓練セッション前後での言語機能の変化について検討していく。また上述のfMRI実験で定められた関心領域を用いてrTMS実験を実施する。これらの実験についてはすでに所属機関での倫理審査承認が得られており、随時実験を開始することが可能である。
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Causes of Carryover |
fMRIニューロフィードバックに関して、当初の計画では平成27年度中に国立障害者リハビリテーションセンター研究所に新たにリアルタイム解析用のサーバーを設置し、MATLABおよび各種toolboxを導入して実験系を構築する予定だった。しかし北海道大学との共同研究として健常者対象のニューロフィードバック実験を開始することができたため、それらの物品費が当該年度は不要となった。またrTMS実験については福島県立医科大学で実施する計画だが、開始が遅れたためその分の旅費等も繰越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用の必要がなくなった物品費にかわって、北海道大学での実験実施に際して旅費、およびMRI装置の使用量が発生する。次年度使用額となった分の金額を主としてそれに充てることを計画している。また平成27年度に実施できなかったrTMS実験を開始するため、それに必要であった費用についても随時使用していく。
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