2015 Fiscal Year Research-status Report
高齢者において日常の身体活動量が認知機能と神経基盤へ与える影響の解明
Project/Area Number |
15K16387
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
原田 健次 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 予防老年学研究部, 外来研究員 (70736058)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 拡散テンソル画像 / MRI / 身体活動 / 認知機能低下 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
日常生活において身体活動量が多いことは認知機能の抑制に有効であることが示唆されている。しかし、身体活動量が多いことにより、なぜ認知機能が向上もしくは維持できるのか、その神経基盤はいまだ詳細には明らかになっていない。 そこで、本研究では、認知症・軽度認知機能障害などとの関連が近年報告されるようになってきた脳の構造や機能的なネットワークと、日常生活における身体活動量との関係について検証する。 軽度の認知機能低下がみられる70歳以上の高齢者45名(MMSE得点:21~24点)を対象として、MRIを用いて脳構造画像(T1強調画像、拡散テンソル画像)、脳機能画像(安静時fMRI)を撮像した。加速度計を用いて日常生活における身体活動量を計測した。 身体活動量が最も多い群11名(歩数:8866±2017歩/日)と最も少ない群11名(歩数:5345±184歩/日)に分け、拡散テンソル画像(FSLを用いたTBSS解析)を比較した結果、身体活動量が多い群は少ない群よりも左側の脳梁、両側の鉤状束のFA値が高いことが明らかとなった。 脳梁、鉤状束は認知機能低下や認知症との関連が報告されている脳の神経繊維である。本研究の対象者は同程度の認知機能低下を有しているため、本来は同程度の神経基盤を持っていることが考えられる。しかし、本研究の結果から、日常生活における身体活動量が多い高齢者は身体活動量が少ない高齢者よりも、脳の神経繊維から成る構造ネットワークが保たれていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は高齢者における日常生活の身体活動量と脳の構造・機能的なネットワークの関係を解明することを目的としている。現在までに、軽度に認知機能が低下した高齢者を対象とした日常生活の身体活動量と拡散テンソル画像について解析した。結果、軽度に認知機能が低下した高齢者でも日常生活における身体活動量が多いと活動量の少ない高齢者よりも脳の構造ネットワークが保たれていることを明らかにした。 同一対象者にて、T1強調画像、安静時の脳活動データの取得、および、健常高齢者、健常若齢者においてもT1強調画像、拡散テンソル画像、安静時の脳活動、日常の身体活動の計測を実施し終えている。 また、平成27年度9月より60歳以上の高齢者約4000名に対する認知機能検査、身体能力検査、生活様式調査、身体活動量計の配布および脳構造の計測を現在も実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
軽度の認知機能低下がみられる高齢者において T1強調画像と拡散テンソル画像を合わせた脳の構造ネットワーク解析、および、安静時の脳機能ネットワーク解析を行い、日常生活における身体活動量と脳の構造・機能ネットワークの関連についてより詳細に解明する。また、健常高齢者、健常若齢者と比較することで、年齢や認知機能の程度により、日常生活の身体活動量と脳の構造・機能ネットワークとの関連に違いが生じるか検証する。 平成27年度9月より実施している検査を引き続き行うとともに、活動量計から得られる日常生活の身体活動と脳構造ネットワークの関連についてより大規模の対象における解析を実施する。 次年度は今年度に得られた結果および、新たな解析により得る結果の学会発表、論文投稿も合わせて実施していく。
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Causes of Carryover |
取得した画像データのデータベース作成および、解析プログラムの作成を外注する予定であったが、データ整理・解析のシステムを自身で構築したため、また、購入予定であったプログラムを使用した作業を、代替できるプログラムにて実施できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
解析およびデータ計測の補助者への謝金として支出する。また、今年度の結果および次年度得られる結果の学会発表、論文投稿費用として使用する。合わせて脳画像解析に関連する情報を得るための講習会および関連学会への参加のための渡航・宿泊費用として支出する。
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Research Products
(2 results)