2016 Fiscal Year Research-status Report
高齢者において日常の身体活動量が認知機能と神経基盤へ与える影響の解明
Project/Area Number |
15K16387
|
Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
原田 健次 中京大学, 体育学研究科, 実験実習助手 (70736058)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 身体活動 / 高齢者 / 認知機能 / VBM / TBSS / MRI / 脳構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
日常生活における身体活動量が多いことは認知機能低下を抑えることが示唆されている。健常高齢者において身体活動量が認知機能やその機能を支えていると考えられる脳構造へ与える影響については報告があるが、認知機能が低下したものを対象として客観的に身体活動量と脳構造の関係について報告している研究は十分でない。そこで、認知機能が低下した高齢者を対象にとし加速度計を用いて身体活動量を客観的に計測し、認知機能低下や認知症の発症に関連して萎縮することが報告されている脳部位と身体活動量の関係を検討した。 軽度の認知機能低下(MMSE得点:21~24点)がみられる70歳以上の高齢者44名の脳画像をMRIにてT1強調撮像法により計測した。また、加速度計により日常生活における身体活動量を計測した。対象者全体の身体活動量の平均±1SDを基に身体活動量が多い群6名(MVPA:58.9±11.5分/日)、身体活動量が少ない群7名(MVPA:19.9±4.2分/日)に分類した。Voxel Based Morphometry(VBM)の手法を用いてAutomated Anatomical Labeling(AAL)に基づいた脳部位の容積を算出した。 算出した各脳部位の容積を身体活動量の多い群と少ない群で比較したところ、身体活動量が多い群は少ない群よりも左腹側前帯状回の容積が少ないことが明らかとなった。 身体活動量が多い群は少ない群よりも左腹側前帯状回の萎縮が生じているにも関わらず同程度の認知機能を有していた。このことから、日常生活における身体活動量が多いことにより、特定部位の脳構造の萎縮が生じたとしても認知機能を維持できる可能性があることが考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は高齢者において認知機能の維持や向上との関連が示唆されている身体活動と脳の構造・機能的なネットワークの関係を解明することである。軽度の認知機能低下(MMSEが21~24点)を有する高齢者および、正常な認知機能をもつ高齢者を対象として加速度計を用いた日常生活における身体活動量の計測および、脳構造(灰白質解析: T1強調画像、白質解析:拡散テンソル画像)、安静時の脳活動(安静時脳機能画像)を計測した。 現在までに本研究では、認知機能が低下した高齢者を日常生活における身体活動量に基づいて分類し、身体活動量が多い群と少ない群の灰白質(VBM解析)、白質(TBSS解析)の構造について検討した。その結果、(1)身体活動量が多い群は少ない群と比較して脳の局所(左腹側前帯状回)が萎縮している、(2)白質(帯状束、鉤状束)の構造が保たれていることを明らかにした。研究対象とした軽度の認知機能低下を持つ高齢者は同程度の認知機能低下がみられるため本来は同質の脳構造を持っていることが考えられたが、身体活動量の違いにより灰白質と白質において異なる構造を有している可能性が示された。 現在、グラフ理論に基づいたT1強調画像と拡散テンソル画像を用いた脳構造ネットワークの解析、および安静時脳機能画像を用いた安静時脳機能結合について現在解析中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は今年度に得た結果の論文投稿をおこなう。また、(1)、(2)の解析を進めていく。(1)軽度の認知機能低下がみられる高齢者において身体活動料の違いにより脳の構造は異なるが認知機能が同程度である要因を明らかにするために脳の活動に着目し、安静時脳機能結合を解析する。(2)灰白質と白質のそれぞれにおいて差異があることを明らかにしているが、脳の構造的なネットワークという点から解析を行うためにグラフ理論に基づいた脳構造のネットワーク解析を進めていく。新たな解析により得られた結果は随時、学会発表および論文の投稿を実施していく。
|
Causes of Carryover |
実施予定であった解析を行うためのデータ作成が遅れたために購入を予定していた解析プログラムを購入しなかったため。また、論文の投稿及び、学会発表を次年度の実施に移行したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
解析補助者への謝金、今年度購入を予定していた解析ブログラムの購入および、論文投稿、学会発表に使用する。
|
Research Products
(1 results)