2016 Fiscal Year Research-status Report
肥満とリンパ浮腫のメカニズムを解明し、生活支援に結びつける
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15K16399
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Research Institution | Hokkaido Bunkyo University |
Principal Investigator |
佐藤 明紀 北海道文教大学, 人間科学部, 講師 (40585585)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レプチン濃度 / リンパ浮腫 / 管腔形成能 / 増殖能 / IL-6 / SOCS3 / 脂肪細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の実施状況報告書で報告した結果に対し、追加実験を重ね研究手法や考察に間違いがないかの検討を続けた結果、昨年度の研究実績の概要で報告したとおりの結果を確認でき、共同研究者とのディスカッションを重ね、最終的に、2016年7月1日に雑誌名:PLOS ONE、タイトル:Novel Mechanisms of Compromised Lymphatic Endothelial Cell Homeostasis in Obesity: The Role of Leptin in Lymphatic Endothelial Cell Tube Formation and Proliferation、筆頭著者:A.Sato, R.Kamekura at al. に掲載され、研究結果を報告することができた。
詳細は昨年度の実施状況報告書で記載したとおり、レプチン高濃度刺激により管腔形成能・増殖能が低下し、炎症性サイトカイン(IL-6)発現亢進に伴い、肥満者にリンパ浮腫が多いと言われる臨床的意義の1つとなることが示唆され。脂肪細胞から分泌されるレプチンがリンパ管内皮細胞に直接影響を与える報告はこれまでになく、今回の結果に加え、今後はレプチンと反対の作用を持つアディポネクチンによる影響や脂肪細胞から分泌される他の因子についても検討にも興味が持たれる。
しかし、今回の実験はあくまでin vitroの実験結果であり、リンパ浮腫患者のリンパ管内皮細胞に直接影響しているかの断定には至らない。今後は、従来のリンパ浮腫患者に対する治療は、単にドレナージや圧迫療法を含む複合的治療を提供するだけではなく、肥満管理をin vitroの視点で配慮した治療が重要視される。さらに、理学療法士を含むリンパ浮腫治療を提供する臨床家にとっても、リンパ浮腫患者にとっても、今回の肥満とリンパ浮腫のinvitroの研究は、治療する上での知識と技術の向上に結びつき、今後のリンパ浮腫患者の治療効果の向上と、生活上の安心・期待に結び付けられる可能性が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
28年度4月より研究代表者の所属変更に伴い、昨年度は実験を継続する事ができたが、本学には研究機材が一部整っていないものもあり、研究計画よりも若干遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、リンパ浮腫と脂肪細胞との関連する因子を検討できたことから、最終年度は、実際の乳癌患者が手術直後から運動や肥満を配慮することで、実際のリンパ浮腫発症に関連があるかを検討する。我々は、既に平成27-28年度に、乳癌と診断された患者に対し、術前から術後1年まで運動療法や肥満管理などの生活指導を提供した群と、提供していない群にランダムに分類しリンパ浮腫の発症について調査を行ってきた。今年度はこの臨床データを解析し、実際に理学療法を実施することによる効果を検証したい。術前からの指導がリンパ浮腫の発症を予測した生活支援に結びつける可能性が認められれば、リンパ浮腫を事前に防ぐことができる可能性がある。
一方、リンパ管内細胞の研究継続については、リンパ浮腫特異的に発症する蜂窩織炎と脂肪細胞の関連を調査するため、これまでに細胞培養温度を37℃と39℃で細胞の増殖能や管腔形成能の実験を行ったところ、培養温度の上昇により細胞の増殖能の低下を認める結果を得ている。今後は引き続き管腔形成能を検討し、実際に脂肪細胞から分泌されるサイトカインの影響などについて明らかにし、原因が不明な点が多い蜂窩織炎によるリンパ浮腫増悪症例に対する治療の一助をとなる基礎実験を継続したい。
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Causes of Carryover |
実験拠点を札幌医科大学から本学へ移動するため、本学で必要な備品の検討していたが、実験施設の完成が2017年4月以降であったことから、28年度の研究費の使用を制限いたしました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本学においての実験施設の運用が徐々に始まっている。実験備品として現在-80℃フリーザーがないため、これまで実験を行ってきた、凍結細胞、試薬等を札幌医科大学から運搬することができなかったが、施設準備が整ったことから、今後は備品の導入が可能となり、専用のフリーザーを準備することで、本学でも積極的に実験が実施できることから購入準備を進めます。
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Research Products
(2 results)