2015 Fiscal Year Research-status Report
効果的な観察学習を促進させる手本の検討とその背景因子 -手本の習熟度に着目して-
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15K16402
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Research Institution | Ryotokuji University |
Principal Investigator |
川崎 翼 了徳寺大学, 健康科学部, 助教 (10735046)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 運動学習 / 運動観察 / 手本 / 運動イメージ / 手指巧緻性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、運動観察を用いた運動学習過程において、より運動を促す手本を明らかにすることを目的としている。具体的には、習熟した理想的な運動を観察した場合より、未習熟な(拙劣さが残るが観察者よりスキルの高い、取り組みによって比較的短期間に到達可能な)運動を観察した方が運動学習が促進されるのではないかという仮説を持って検討を試みた。 H27年度は、2種類の手本を見ている最中の視線行動の違いについての検討および、高齢者を対象として2種類の手本を観察することによる運動学習効果の違いについての検討を行った。 第一の成果は、2種類の手本を観察している最中の視線行動には違いが認められないという結果を得たことである。視線行動分析装置を用いて、2種類の手本観察中の視線が指か球あるいは掌のどこを観察しているかについて割合を分析したが、両者に違いを認めることがなかった。一方で、観察後に内省を聴取したところ、未習熟な手本を観察した方が、手本として有用であると答える人数が有意に多かった。本研究成果は、了德寺大学研究紀要にて発表された。 第二の成果は、高齢者を対象とした場合、未習熟な手本を観察した方が運動学習が促進されるということが明らかになった点である。球回し課題を用いて、未習熟な手本と習熟した手本を観察した後の球回し速度および落下回数の改善度を分析した。その結果、未習熟な手本を観察した際は、習熟した手本を観察した場合よりも、球回し速度が有意に改善した。一方で、落下回数については手本間の違いを認めなかった。以上の事から、未習熟な手本を観察することは、球回し速度に表される運動の円滑性の向上に寄与するということが示唆された。本研究成果は、理学療法科学学会主催の国際学術大会で発表し、現在は国際誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画であった、手本観察中の視線行動分析、脳活動分析、高齢者での検討の内、視線行動分析と高齢者での検討を終えた。現在は脳活動解析のプレ実験を行っているところであり、計画通りに伸展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
脳活動分析を今年度一年かけて行う予定である。実験にはfMRIを使用して脳活動の計測を行うことがメインとなるが、皮質のボリュームを解析手法なども駆使していきながら、運動観察の特性を明らかにしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究を遂行するにあたって物品(文具などの消耗品)の購入が当初予定より抑えられたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度への繰り越し金は今年度は所属施設外での実験が増えるため、消耗品などの物品購入に充てる予定である。 次年度の助成金の使用は、脳活動データ解析用ソフト、筋電位測定機器、英文校正、旅費が主な支出となる予定である。
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