半側空間無視に対応した読書アプリケーションの開発研究

2015 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K16406
• Research Institution: Nihon Fukushi University
• Principal Investigator: 宮田 美和子 日本福祉大学, 健康科学部, 助教 (90515602)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: 読書アプリケーション / 半側空間無視 / iPad

Outline of Annual Research Achievements

本研究では左半側空間無視(USN)に対応した読書アプリケーションの開発を行うために，平成27年度～平成30年度で1.読書アプリケーションの開発，2.検証実験1　健常者における読書アプリケーション利用時の文章理解度の検証，3.検証実験2　USN患者における読書アプリケーションの実用性の検証，4.検証実験3　USN症状への治療効果の検証について研究を進める予定である．
平成27年度計画では1～3を行う予定であった．
1.読書アプリケーションの開発では，決まった文章にのみ対応していたものを10冊ほどの本を読み込めるアプリケーションに改良した．ページ送り，ページ戻り機能，一行ずつタッチペンでなぞりながら文章を読む機能を追加し，一行を読み終えてタッチペンを画面から放したら読んだ行が消えるようにした．なぞり読みにしたことで，左側への視覚探索時に上肢の運動機能が必要となる．左側を見るだけでなく，上肢を左空間内で動かし，それを見ることでUSN症状が改善するという報告もあるため，タッチペンでのなぞり読みにより，USN症状の改善効果がより期待できる可能性がある．さらに平成27年度の改良ではログ表示機能を追加した．このことで(4)検証実験3　USN症状への治療効果の検証の際に1回あたりの訓練時間を記録できるようになった．また一行毎の読み時間まで記録でき，画面の右側表示と左側表示の読む時間の違いや，繰り返し活用することでの読み時間の変化などの分析が可能となった．
このような改良を重ねた結果，当初予定していたiPadでは容量が不十分であることが判明し，適当な容量を検討することが必要となり，検証実験で利用する予定であったiPadの購入が遅れた.このため，2,3の検証実験については準備のみの進捗となった．

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

平成27年度に計画していた1.読書アプリケーションの開発については予定通りの進捗であるが，2.検証実験1　健常者における読書アプリケーション利用時の文章理解度の検証と3.検証実験2 USN 患者における読書アプリケーションの実用性の検証については，当初の計画では平成27年度から検証実験を開始する予定にしていたが，検証実験を進めることができず，実験準備までの進捗となった．
この理由は，読書アプリケーションの開発に伴い，購入するiPadの容量の決定が計画当初の予定より遅れたためである．しかし平成27年度中にiPadの容量を決定することができ，iPadを必要台数購入することができたため，検証実験の準備は進めることができた．このため，平成28年度から検証実験を本格的にスタートする予定である．

Strategy for Future Research Activity

1.読書アプリケーションの開発については，当初の計画どおりに平成28年度はメールや新聞の読み込みに関する開発を行っていく．
2.検証実験1　健常者における読書アプリケーション利用時の文章理解度の検証と3.検証実験2　USN患者における読書アプリケーションの実用性の検証については，平成27年度より開始する予定であったが実験準備の段階に留まっているため，計画が若干遅れている．当初の計画では平成28年度より本格的にデータを取る予定をしていたため，準備が整い次第速やかに検証実験を開始する予定である．
4.検証実験3　USN症状への治療効果の検証については，平成28年度より開始する予定だったが，検証実験1，2の進捗によっては，対象者へ貸し出すiPadの台数が不足する可能性がある．その場合は平成29年度から本格的に検証実験3を開始する予定である．
検証実験を行う期間が短くなることで，実験対象者の数が減る可能性がある．このため「USN患者における読書アプリケーションの実用性の検証」では病巣別の比較が困難となる事や「USN症状への治療効果の検証」では，治療期間や一日あたりの訓練時間による治療効果の比較などの詳細な分析が困難となる可能性がある．
本研究における検証実験の目的は，USN患者における読書アプリケーションの効果の検証であるため，実験の対象者数によっては半側空間無視患者全体での効果の検証を行うのみにとどめ，詳細分析は今後の課題としていく予定である．

Causes of Carryover

平成27年度に検証実験を行うことができなかった. このため，検者と被検者への謝金が未使用状態となったため．

Expenditure Plan for Carryover Budget

平成27年度から予定していた検証実験を平成28年度から，計画当初と同様の手法で実施する予定である．このため，当初の計画通り謝金として使用する．