2015 Fiscal Year Research-status Report
自律神経系調節に伴う誘発筋電図F波および体性感覚誘発電位変化
Project/Area Number |
15K16420
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Research Institution | University of Human Arts and Sciences |
Principal Investigator |
高原 皓全 人間総合科学大学, 人間科学部, 助教 (20641327)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 誘発筋電図F波 / 体性感覚誘発電位 / 自律神経系調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヒトの骨格筋収縮調節に及ぼす自律神経系調節の影響について、誘発筋電図および誘発脳波を用いて明らかにすることを目的とした。平成27年度は、9名の健康な成人男性を対象として、等尺性掌握運動時における心拍数、心臓自律神経系調節、血圧、誘発筋電図F波(F波)、体性感覚誘発電位(SEP)の変化について検討した。測定条件は、最大随意収縮の10%、20%、30%強度条件下での右腕の等尺性掌握運動およびコントロール条件(0%条件)とした。測定項目は、心拍数、心臓副交感神経系調節、血圧、F波、SEPとした。左手の正中神経を手根部で最大上刺激にて経皮的に電気刺激し、その際のF波およびSEPを記録した。電気刺激幅は0.2ms、刺激頻度は2Hzとした。F波は、電気刺激と同側の短母子外転筋から導出した。SEPは刺激側の手の感覚領域であるC4電極(国際10-20法)の位置から2cm後方のC4'電極から導出し、120回分のデータを加算平均した。F波の分析項目は出現頻度とした。SEPの分析項目はN20振幅とした。平成27年度の主な知見は、①心拍数、血圧は0%条件と比較して掌握運動によって増加するが、心臓副交感神経系調節には変化がみられなかったこと、②F波出現頻度は掌握運動時に増加したこと、③N20振幅は変化がみられなかったことであった。平成27年度の知見から、掌握運動時には反対側の手のα運動ニューロンの興奮性が増大することが明らかになった。一方で、N20振幅に違いがみられなかったことから、筋力発揮時には全身的に脊髄α運動ニューロンの興奮性が増大するが、一次体性感覚野への感覚入力には変化みられないことが示唆された。 平成28年度は寒冷昇圧試験に伴う交感神経系活動賦活化を設定条件として検討を行い、自律神経系調節の影響について更に検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた実験1と実験2の順番の入れ替えが生じたが、初年度に予定した研究課題は概ね順調に遂行することができた。平成27年度は、9名の健康な成人男性を対象として、等尺性掌握運動時における心拍数、心臓自律神経系調節、血圧、誘発筋電図F波(F波)、体性感覚誘発電位(SEP)について測定を行った。主な知見は、①心拍数、血圧は0%条件と比較して掌握運動によって増加するが、心臓副交感神経系調節には変化がみられなかったこと、②F波出現頻度は掌握運動時に増加したこと、③N20振幅は変化がみられなかったことであった。得られた知見は、国内学会(日本体力医学会大会)で公表予定である。平成28年度は、寒冷昇圧試験時の変化について更に検討を行う。平成28年度の研究課題は、研究協力者と既に研究打ち合わせを済ませている。また、研究対象者にも研究参加の同意を得ている。これらのことから、計画通りに遂行できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、寒冷昇圧試験時の変化について更に検討を行う。痛み刺激に伴う自律神経系調節の変動の影響を受けてF波やSEPなどの指標が変化するものとする仮説の検証を行う。健康な成人男性10名を対象(インフォームドコンセントの取得を実施し、同意が得られた者)とする。被験者は手掌部から手首までを水に浸けることとする。測定条件は冷水条件(4℃)および中立温条件(35℃)とする。測定項目、分析項目は平成27年度と同様とする。得られたデータを条件間で比較し、痛み刺激による自律神経系調節の変化が誘発筋電図F波および体性感覚誘発電位に及ぼす影響について検討する。得られた研究成果は、第72回日本体力医学会大会で公表し、評価を受ける。原著論文(査読あり)として学術雑誌に投稿する。所属先機関HP等を利用し、本研究の知見の普及に努める。本研究は、山口英峰准教授(吉備国際大学)、関和俊准教授(流通科学大学)、小野寺昇教授(川崎医療福祉大学)ならびに人間総合科学大学学部学生を研究協力者として遂行する。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していた測定機器の一部が生産中止となっていたため、物品費の支出額が大きく予定を下回った。また、解析専用コンピュータの購入についても初年度内に行うことができなかった。以上が次年度使用額が生じた理由である。平成28年度はまず解析専用コンピュータを購入することとする。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験で得られた心電図、血圧、筋電図、脳波などの波形解析専用コンピュータとソフトウェアを購入する。また、研究成果は第71回日本体力医学会大会で公表し、学術的な評価を受ける。そのための学会参加費ならびに旅費を計上する。学術雑誌に投稿し、本研究の知見を公表する。論文投稿に必要な経費(英文校正費,論文投稿料,論文別刷代など)を計上する。研究協力者(対象者および検者)に対する謝金を支払うための経費を計上する。
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