2015 Fiscal Year Research-status Report
体育の学習集団研究における活動理論と運動発達論を統合した授業分析枠組みの開発
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15K16429
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
加登本 仁 滋賀大学, 教育学部, 講師 (40634986)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 授業分析枠組みの開発 / 文献考査 / 調査研究の実施 / 口頭発表 / 論文化に着手 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、活動理論を手がかりとした授業分析枠組みの開発に向けた基礎的研究として、「活動システム」理論(Y. Engeström,1987)における集団的活動を媒介する「道具」の概念に言語や身体がどう位置付けられているのかについて、文献考査を行った。その結果、活動理論における「道具」の概念は「技術的な道具」や「心理的な道具」が含まれ、体育学習においては、特に「心理的な道具」として、客観的な運動技術に関する認識や、自身の運動感覚をもとにした技術認識が、言語あるいは非言語(身体)の記号として交流されていると捉えることができると考えられた。 また、運動学習における言語の働きや、他者を媒介とした運動習得の過程、認識形成と技能習熟との関係といった問題について、運動学の文献をもとに考察した。さらに、体育授業で子どもが他者の運動経過を観察し、読み取った運動感覚をどのように言語化するのかについて、小学校2年生、4年生、6年生を対象とした調査を実施し、発達や観察対象による特徴、および教師の指導方法による影響を分析した。その結果、運動経験が少ない2年生では、運動の準備局面や終末局面についての記述が多く、主要局面における運動観察が困難であることが示唆された。主要局面についての記述は6年生では多くみられ、相互観察の組織化における発達の特徴が明らかとなった。また、4年生までの児童は運動をオノマトペによって表現する頻度が高く、グループ間で交流される「道具」(言語)と運動感覚とをともに共有させる指導が有効であることが示唆された。 これらの研究は体育教師教育研究会や学校体育研究同志会の研究集会において発表し、他の研究者や小・中・高の教員に公表するとともに、今後に向けた意見交換を行った。平成28年度中の論文化に向けて、さらに文献考査を進めるとともに、執筆に着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究計画は、主に文献の収集による理論的考察を内容としていたため、おおむね計画通り進めることができた。しかし、研究成果の公表においては、研究課期間の1年目中に達成できたものは少なく、平成28年度での論文化や学会発表の実施が課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の計画通り、開発した授業分析枠組みを用いた事例研究に着手する。また授業分析枠組みの開発についての研究成果を学会発表や論文投稿により公表していく。 事例研究の実施にあたり、研究協力者である若原万莉教諭の勤務校・学級の実態によっては、計画を変更し、研究対象を見直さなければならない可能性も考えられる。その場合は、筆者と研究的交流のある学校体育研究同志会に所属する教員やその授業を対象とすることで対応可能である。
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Research Products
(6 results)