Outline of Annual Research Achievements |
本研究はバーを放物させないfast bench press (BP-F)と、スミスマシンを用いたbench press throw(BP-T)で肘関節ピーク角速度を比較し、どちらが砲丸投げ時の関節角速度に近いか、また12週間のトレーニング後においてどちらがパフォーマンスをより向上させるかについて砲丸投げ選手を対象に検証した(n = 9)。一方、スミスマシンを用いた放物動作が可能となる種目には限りがあり、スミスマシンを所有していない施設もある。その為、我々が発案したthrust-back(挙上者がコンセントリック動作を止めるのではなく、スポッターがバーや四肢を押し返す)が放物動作の代替策となり、関節角速度や筋放電を向上させるか否か(fast vs. thrust-back)についてウェイトトレーニング経験者を対象にbench press(BP), rowing(ROW), knee extension(KE)を用いて検証した(n = 8)。
BP-F vs. BP-Tにおけるピーク角速度は、50, 40, 30%1RMの負荷でそれぞれ419, 466, 503度/s vs. 704, 794, 854度/sとなり、BP-Tの方が有意に速かった(1.70倍)。砲丸投げのピーク角速度は1539度/sであった。12週間のトレーニング後では1RM(+10%)と砲丸投げ記録(+3%)がBP-T群において有意に増加したが、BP-F群ではパフォーマンスに変化は観られなかった。
Fast vs. thrust-backのピーク角速度(50, 40, 30%1RM)は、BP: 387, 425, 454度/s vs. 396, 449, 492度/s, ROW: 238, 274, 308度/s vs. 261, 290, 326度/s, KE: 188, 210, 229度/s vs. 196, 229, 255度/sとなりthrust-backの方が有意に速かった(1.04-1.11倍)。しかし放物動作による増加割合には至らなかった。Concentric phaseの筋放電振幅においても全ての種目でthrust-backの方がfastよりも高かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、『低負荷・高速度パワートレーニングを行う際に生じるコンセントリック終局での減速を軽減すること』の重要性を検証することである。この学術的背景を概説したreview articleをH28年4月に出版した(Journal of Physical Fitness and Sports Medicine, 5(2): 153-166, 2016)。また、これまで検証してきたハイパーベンチレーションの効果について、『レジスタンス運動中の最大レップ数や挙上速度増加に有効である』という最新の研究成果を第70回日本体力医学会大会、及び2015オーストラリアスポーツ医学会大会にて口頭発表した。
現時点では、thrust-backによる角速度と筋放電への効果について8名の被験者から結果が得られている。今後は総被験者数が15名程となるよう追加実験を行い、統計的パワーを向上させる。
当初ではthrust-backに加えて、ハイパーベンチレーションによるトレーニング出力の増加効果を検証する計画としていた。しかし1回の実験での検証項目が多く、被験者への負担になってしまう為、ハイパーベンチレーションはH28年度の研究課題として別途検証する事とした。またthrust-backによる速度・筋放電増加効果が、実際にトレーニング効果としてどの程度反映されるかについてもH28年度の課題とする。これは当初の計画通りの流れとなる。
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