2015 Fiscal Year Research-status Report
競技力向上の為のトレーニング革命:スラストバックとハイパーベンチレーションの導入
Project/Area Number |
15K16461
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
坂本 彰宏 順天堂大学, スポーツ健康科学部, ポスドク (70615434)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | パワートレーニング / 最大エフォート / パフォーマンス / 角速度 / EMG |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はバーを放物させないfast bench press (BP-F)と、スミスマシンを用いたbench press throw(BP-T)で肘関節ピーク角速度を比較し、どちらが砲丸投げ時の関節角速度に近いか、また12週間のトレーニング後においてどちらがパフォーマンスをより向上させるかについて砲丸投げ選手を対象に検証した(n = 9)。一方、スミスマシンを用いた放物動作が可能となる種目には限りがあり、スミスマシンを所有していない施設もある。その為、我々が発案したthrust-back(挙上者がコンセントリック動作を止めるのではなく、スポッターがバーや四肢を押し返す)が放物動作の代替策となり、関節角速度や筋放電を向上させるか否か(fast vs. thrust-back)についてウェイトトレーニング経験者を対象にbench press(BP), rowing(ROW), knee extension(KE)を用いて検証した(n = 8)。
BP-F vs. BP-Tにおけるピーク角速度は、50, 40, 30%1RMの負荷でそれぞれ419, 466, 503度/s vs. 704, 794, 854度/sとなり、BP-Tの方が有意に速かった(1.70倍)。砲丸投げのピーク角速度は1539度/sであった。12週間のトレーニング後では1RM(+10%)と砲丸投げ記録(+3%)がBP-T群において有意に増加したが、BP-F群ではパフォーマンスに変化は観られなかった。
Fast vs. thrust-backのピーク角速度(50, 40, 30%1RM)は、BP: 387, 425, 454度/s vs. 396, 449, 492度/s, ROW: 238, 274, 308度/s vs. 261, 290, 326度/s, KE: 188, 210, 229度/s vs. 196, 229, 255度/sとなりthrust-backの方が有意に速かった(1.04-1.11倍)。しかし放物動作による増加割合には至らなかった。Concentric phaseの筋放電振幅においても全ての種目でthrust-backの方がfastよりも高かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、『低負荷・高速度パワートレーニングを行う際に生じるコンセントリック終局での減速を軽減すること』の重要性を検証することである。この学術的背景を概説したreview articleをH28年4月に出版した(Journal of Physical Fitness and Sports Medicine, 5(2): 153-166, 2016)。また、これまで検証してきたハイパーベンチレーションの効果について、『レジスタンス運動中の最大レップ数や挙上速度増加に有効である』という最新の研究成果を第70回日本体力医学会大会、及び2015オーストラリアスポーツ医学会大会にて口頭発表した。
現時点では、thrust-backによる角速度と筋放電への効果について8名の被験者から結果が得られている。今後は総被験者数が15名程となるよう追加実験を行い、統計的パワーを向上させる。
当初ではthrust-backに加えて、ハイパーベンチレーションによるトレーニング出力の増加効果を検証する計画としていた。しかし1回の実験での検証項目が多く、被験者への負担になってしまう為、ハイパーベンチレーションはH28年度の研究課題として別途検証する事とした。またthrust-backによる速度・筋放電増加効果が、実際にトレーニング効果としてどの程度反映されるかについてもH28年度の課題とする。これは当初の計画通りの流れとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度の序盤では、thrust-back効果の検証において追加実験を行い、被験者数を増やすことで統計的パワーを向上させる。
H27年度に検証した放物動作やthrust-backによるピーク角速度の増加効果は、疲労を生じていない時の計測であった。しかし、実際のトレーニング時では疲労によるパワー出力の低下が余儀なくされる。我々がこれまでに報告した『ハイパーベンチレーションによる疲労軽減効果』を放物動作やthrust-backと組み合わせることで、特に疲労時のパワー出力を向上させ、トレーニング効果を更に増大できないかという仮説をH28年度の中盤以降で検証していく。この検証の際にはスミスマシンを用いることが出来ない、もしくは放物動作が出来ないトレーニング種目も対象とすることで、thrust-backの利便性を明らかにしていく。
また、H27年度の研究成果を学会発表(日本体力医学会大会[9月]、オーストラリアスポーツ医学会大会[10月])や論文執筆を経て国際的に発信していく。
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Causes of Carryover |
H27年度に実施したthrust-backの実験において、関節角度計や筋電図から角速度や筋放電振幅を算出する解析工程には膨大な時間を要するため、当初計画していた総被験者数の15名が達成されておらず、現状において8人までのデータ収集に留まっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度の序盤において追加実験を行い被験者数を15名まで増やす。持越し金額は追加実験で生じる謝礼・人件費として全て使用する予定である。
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Research Products
(8 results)