2016 Fiscal Year Research-status Report
競技力向上の為のトレーニング革命:スラストバックとハイパーベンチレーションの導入
Project/Area Number |
15K16461
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
坂本 彰宏 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 助教 (70615434)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | パワートレーニング / 最大エフォート / 呼吸性アルカローシス / 疲労 / EMG |
Outline of Annual Research Achievements |
パワートレーニングでは、スピード系とストレングス系パワーを共に向上させることが重要である。また各挙上中に最大エフォート(速度や力発揮)を出し切ることで、トレーニング効果を増大出来る事が報告されている。しかし低負荷を用いるスピード系トレーニングでは動作に勢いが付き、コンセントリック終盤で自ら減速をしてしまう。このエフォート低下を解消する為に、スミスマシンを用いた放物動作(ベンチプレス投げやスクワットジャンプ)が推奨されている。しかし運動種目が限られたり、スミスマシンを所有していない施設があることから代替策が必要である。そこで我々が発案したthrust-back(挙上者はコンセントリック動作を減速せず、スポッターがバーや四肢を押し返す)が、エフォート増大に効果的であるかについて検証した。被験者は最大速度によるベンチプレス、ローイング、ニーエクステンションを50, 40, 30%1RMの負荷にてthrust-back有り vs. 無しで行い、2条件間でコンセントリック局面の関節角速度と筋放電振幅を比較した。その結果、thrust-backは全ての種目、負荷において角速度と(1.06~1.16倍、p=0.003~0.000)、筋放電振幅を増加させ(p=0.026~0.000)、エフォート増大に有効であることを示した。
エフォート低下に関与する第2の要因として疲労が挙げられる。そこで自発性ハイパーベンチレーション(HV)が、pH低下からの回復を加速させ、パワー出力低下を軽減できるとの仮説を立てた。HVの疲労軽減効果については、80%1RMのストレングス系ベンチプレスとレッグプレスにおいて有効性を報告したが、放物動作を伴うスピード系トレーニングへの有効性は未検証である。そこで現在は、40%1RMでのベンチプレス投げとスクワットジャンプ(12レップス×5セット)を対象に検証を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Thrust-backによるエフォート増大効果において、昨年度の実施報告では被験者数8名の途中成果であったが、H28年度に至っては計21名の被験者からデータを取得し(当初の目標人数15名)、その有効性がより強く示された。本研究の成果は、第71回日本体力医学会大会、及び2016オーストラリアスポーツ医学会にて社会発信している(口頭発表)。
現在は、ハイパーベンチレーションによる疲労軽減効果を、スピード系パワートレーニングであるベンチプレス投げとジャンプスクワットを対象に検証している。これまでに4名の被験者からデータを得ているが、統計的に有意なパフォーマンス向上効果は観られていない。H29年度では検証を継続し、計15名程からデータを取得する。しかし、ハイパーベンチレーションの検証においては、重度の疲労を発生させるプロトコールを設ける事と、パワー系アスリートを対象にする事が必要条件となる。その為、被験者の体力や、個々の記録会・試合のスケジュールを考慮したうえで実験を遂行するという制約が掛かる。研究の遂行機関はスポーツ系の大学であり学生アスリートが多く在籍する為、目標被験者数の確保は可能である。しかし、データ収集には日数を要する為、完了は7月頃を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度の序盤はハイパーベンチレーションの検証を7月頃まで継続し、データ収集を完了させる。この研究成果については9月に行われる第72回日本体力医学会大会にて発表し、社会的発信をしていく。
また、thrust-backによるエフォート増大効果については、一過性の運動を用いた検証に留まっており、実際にthrust-backをトレーニングに用いることでパワー向上をどれほど増大出来るかについては未検証である。その為、本年度はハイパーベンチレーションの検証と並行に、thrust-back無し・有りでのトレーニング実験を遂行し(8~12週間)、実際にトレーニング現場で推奨できる科学的根拠を深めていく。
更に、これまでの検証で得た成果を、スポーツやトレーニングに関わる多くの人々に周知されるよう、学術論文に投稿して国際的に発信する。
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Causes of Carryover |
本研究の遂行にあたり、主に学生アスリートから実験参加の協力を得ている。その為、長期休みや年度末にデータ収集を活発的に行っている。また、多くの項目を計測する為に、データ収集の際は実験補助(検者)の協力も得ている。実験の内容を考慮し、被験者や検者への謝金を計上しており、特に年度切り替え時での使用額が多くなる。
現在、ハイパーベンチレーションの実験を遂行しており、未使用額の多くを消耗品や謝金などで、既に消費している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度では、ハイパーベンチレーションの実験継続と、thrust-backのトレーニング実験を計画しており、未使用額は消耗品費や謝金として全て使用する予定である。
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