2017 Fiscal Year Research-status Report
競技力向上の為のトレーニング革命:スラストバックとハイパーベンチレーションの導入
Project/Area Number |
15K16461
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
坂本 彰宏 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 助教 (70615434)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 呼吸性アルカローシス / リカバリー / ballistic training / power / 最大エフォート |
Outline of Annual Research Achievements |
パワートレーニングは、各挙上で最大パワー(速度と力)を出し切る事により効果が増大する。その為、スピード系パワートレーニングでは、ベンチプレス投げやスクワットジャンプのような放物動作が推奨されている。これによりコンセントリック局面終盤で生じる挙上減速を最小限にする事が出来る。一方、トレーニング時のパワー出力低下は疲労(代謝性アシドーシス)でも生じるため、これを軽減することでパワートレーニングの効果を増大できると考えた。そこでH29年度の研究では、運動セット間の休息時にハイパーベンチレーション(HV)を行い、呼吸性アルカローシスを誘導する事でパワー出力の回復を促進できるかについて検証した。
13名のパワー系学生アスリートが最大エフォートによるベンチプレス投げとスクワットジャンプを、スミスマシンを用いて40% 1RMの負荷にて12レップス×5セットずつ行った。セット間休息はベンチプレス投げでは3分、スクワットジャンプでは5分とした。コントロール条件(CON)では休息時間で通常呼吸による回復をし、ハイパーベンチレーション条件(HV)では、3rd, 4th, 5thセット開始直前30秒間でハイパーベンチレーションを行った(換気量: 114~116 l/min, 一回換気量: 2180~2235 ml, 呼吸頻度: 52~55 回/min, 呼気終末二酸化炭素分圧 [PETCO2]: 18~21 mmHg)。各レップにおけるコンセントリック局面での関節角速度(ベンチプレス投げ: 肘関節, スクワットジャンプ: 膝関節)を計測し、両呼吸条件間で比較した。30秒間のHVにより、血中pHは有意に上昇し(+0.061~0.077, P < 0.001)、PCO2は有意に低下した(-6.7~8.4, P < 0.001)。しかし、疲労による関節角速度の低下はCONとHV条件間で差が観されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H29年度は研究代表者の他の業務による多忙、被験者の部活動中での怪我、測定機器の故障や修繕、などの理由により当初の計画通りに研究が遂行できなかった。しかし、H29年度研究の途中成果は第72回日本体力医学会大会(口頭発表)、及び第3回国際スポートロジー学会(ポスター発表)にて社会発信している。また、H30年度5月現在においてデータ計測が完了しており、本年度10月にはオーストラリアスポーツ医学会にて口頭発表をする予定である。
申請研究ではハイパーベンチレーションの効果に加え、我々が独自に考案したthrust-backの効果も検証する。Thrust-backとは、挙上者自身がコンセントリック動作を減速せず、スポッターがバーや四肢を押し返す方法である。これによりスミスマシンを用いた放物動作テクニックを適用することが出来ない、他のレジスタンストレーニングでパワー出力の増大を図る。Thrust-backがパワー出力や筋放電を向上させることはH28年度の研究で検証済みであるが、実際にトレーニング効果を増大させるかについての検証(トレーニング実験)は未だ行われていない。その為、H30年度においてはthrust-backあり vs. なしの条件間で12週間のパワートレーニング効果を比較する。本研究は、研究期間延長申請の承認を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度においては12~16名の健常者を対象として、12週間にわたるスピード系パワーレジスタンストレーニングをthrust-backあり vs. なしで実施し、パワー系運動タスクの向上効果を比較する。本年度序盤では予備実験を行い、実験プロトコールや測定項目を確定する。中盤から終盤にかけてはデータ測定・解析を行い完了させる。この研究成果については、日本体力医学会、オーストラリアスポーツ医学会にて発表し社会発信をする。また、これまでのハイパーベンチレーションやthrust-back検証で得た成果を学術論文に投稿することで国際的に発信する。
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Causes of Carryover |
申請研究は、前述した理由により研究の遂行がやや遅れている。その為、研究期間延長申請を行い承認を得ている。H30年度においては、全ての研究を遂行し完了する予定である。未使用額は、主に被験者や実験補助(検者)への謝礼、消耗品の購入、測定機器の保守点検、学会発表での旅費などに用いられる。
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Research Products
(5 results)