2016 Fiscal Year Research-status Report
スポーツを通じた「多文化共生」関係構築に関する社会学的研究
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15K16465
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
植田 俊 東海大学, 国際文化学部, 助教 (90734848)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 都市政策 / 政策と生活実態の空間論的関係 / 生活実態 / 空間の生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目(平成28年度)は、初年度の文献、行政資料等の整理および予備的調査を踏まえ、①在日ブラジル人―日本人間の関係の実態およびその形成の舞台となる地域社会の構造、②地域社会形成―発展の背景となる都市計画・都市政策の動向および実態の二側面に焦点をあて、現地調査を実施した。 農業・繊維工業を主要産業とする挙母地域を中心として、度重なる市町村合併と産業エリア拡大、それに伴う居住地の発展、および前史となる町村時代の地域社会の諸特徴が、現在の都市「豊田」の基礎となっている。そうした都市の自然的発展プロセスに同調するかたちで都市計画の立案と実践が展開した。なかでも、地域社会の人びとの暮らしを規定する土地利用に関する政策(道路・住居・商店の展開の基礎)は、地域社会へ大きな影響を及ぼしていることが聞き取り調査等からうかがい知ることができた。 「多文化共生」施策は、上記の都市形成プロセスの結果としての在日ブラジル人集住という実情を受けて展開したものであり、その施策の展開が更なる集住を生み、都市計画およびその実践に反響していくという「空間論的関係」が見られた。「スポーツ」施策についても、「多文化共生」施策との共鳴点は今のところ確認できず、あくまで施策実行の一手段としての位置づけに留まっており、施策上は「乖離」した状況にある。 さらに、こうした行政による地域社会構築の取り組みは、実際に地域社会に居住する人々の日常生活とも乖離している。都市政策による人々の日常生活への「枠づけ」の及ばないところで、それを補完しつつも新たな暮らしのあり方(社会関係のあり方)を構築しようとする人びと独自の実践もまた展開していた。こうした政策と人びとの生活実態との乖離の現実および諸アクターによるその調停の試み(空間論的関係)を、人びとの生活実態に力点を置きつつ総体的に捉えていくことが、今後の課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目(平成28年度)に計画していた現地調査はおおむね順調に進んだ。調査結果は、整理が進み次第、順次学会等で報告していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(平成29年度)は、①現地調査の実施および②これまでの調査結果の集約の二点が作業課題の中心となる。中間年度で取り組んだ、1)行政資料等の収集から見えてきた都市政策のあり方、2)フィールドワークから見えてきた人々の生活実態とその背景にある地域社会の構造に関する調査結果は、研究論文・学会報告などの形で発表することを予定している。
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Causes of Carryover |
中間年度に計画していた回数の現地調査が実施できなかったため、また当初予定していた学会報告等の予定を最終年度に繰り越したため、次年度使用額が発生した。また、図書費等、物品購入費を予定よりも行わなかったこともその理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度の計画の内、実施できなかった調査を本年度に実施し、当初計画と合わせて遂行していく。また、その成果報告のための学会参加等を本年度は積極的に行っていく。その準備のために必要な物品等の購入に、昨年度のからの研究費の繰り越し分を当てることで、最終年度の研究をより充実させていく計画である。
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