2015 Fiscal Year Research-status Report
100m走の加速と速度低下に関与する筋群の特定と義足の影響
Project/Area Number |
15K16470
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
高橋 和文 金城学院大学, 人間科学部, 准教授 (10434549)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 義足 / 筋伝図 / 全力疾走 / 短距離走 / 速度変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,2011~2012年度の科研費若手研究(B)「100m走の加速と速度低下に及ぼす義足の影響」を発展した研究であり,100m走中の加速や速度低下を誘発する筋群の特定,さらには健足と義足で異なる疾走技術要因を明らかにすることを目的としている。 この目的を達成するために,本研究では,以下に示す2つの課題を設定した。 課題1. 加速局面や速度低下局面の疾走フォームを分析することで,健足と義足のキック動作が,加速や速度低下などの速度変化に及ぼす影響を明らかにする。この課題1を明らかにすることは,下腿切断の選手だけでなく,健常の選手に対しても有用な知見になると考えられる。なぜなら,片足切断選手の分析は,推進力と疲労を生み出す健足と義足を有しており,レース中の速度低下を誘発するそれぞれの役割の違いを明らかにできるからである。 課題2. 健足と義足の表面筋電図を測定することで,加速と速度低下に影響する筋群を特定し,筋活動様式が速度変化とキック動作に及ぼす影響を明らかにする。これまで,高い疾走速度を獲得するには,体幹部(主に大腰筋や大臀筋)や大腿部の筋群の関与が指摘されてきたが,速度低下にもこれらの筋群が関与していることを示すことができれば,100m走よりも長い200m走や400m走のパフォーマンスを改善する知見を得ることにつながる。 現在の進捗状況は,2016年3月に,片足下腿切断者の陸上競技選手を対象として,次の3つの方法で,実験測定を行った段階である。1,全力疾走中の疾走フォームをハイスピードカメラで撮影。2,同時に無線の筋伝計を用いて,疾走中の筋電図を測定。3,同時に,レーザー速度計を用いて,疾走速度を計測。今後は,これらのデータを解析し,上に示した研究目的を達成する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は,実験測定を2015年11月に予定していた。ただ,測定の直前に被験者が故障(大腿部の肉離れ)をしたため,予定を変更し,2016年3月に実験測定を行うことになった。実験測定の際,レーザー速度計を用いた疾走速度の計測と筋伝図の計測は,概ね順調に実施できた。ただ,筋伝図と映像を同期するシステムで準備していた機器が,うまく作動しなかった。そのため,急遽,別の方法に変更して計測を行った。現在,筋伝図と動画データの同期を行う作業を,業者に依頼している状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,研究目的を達成するために,測定したデータを適宜処理していくことになる。具体的には,筋伝図の解析,疾走フォームの3次元動作解析,疾走速度の解析である。この中で,特に,時間がかかりそうなのは,デジタイズの作業を伴う,疾走フォームの解析である。今のところ,8月~9月にかけて,デジタイズを行い,動作解析をすすめていく予定である。また,すべてのデータの結果をまとめて分析し,考察をおこなう必要があり,2017年3月頃を目処に,取りまとめを行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初は,2015年11月に実験測定をとりおこなう予定で,準備を行っていたが,被験者の都合(大腿部の故障)により,実験測定を行うことができなかった。そこで,2016年3月に実験測定を行った。しかし,筋伝計については測定機器の購入の段取りがつかず,購入を見送った。なお,2016年3月の実験測定の際に使用した無線の筋伝計は,業者の協力により,デモ機をレンタルすることで,計測を行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度に実施する疾走中の筋伝データの計測に必要な測定機器(無線の筋伝計)の購入および,追加パーツである無線の小型電極の購入に充てる。また,被験者への謝礼や解析のためのアルバイト代への支出も予定している。さらには,研究結果を集計し,考察をおこなうことで,学会発表(旅費の支出)もとりおこなう予定である。
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