2015 Fiscal Year Research-status Report
生徒の心理的成長促進へ向けた運動部活動における指導方略の検討
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15K16471
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Research Institution | Seisen University |
Principal Investigator |
松井 幸太 聖泉大学, 人間学部, 講師 (40739489)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高校運動部活動 / 生徒と指導者の関係 / 依存性 / 自己決定性 / オーバーコミットメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、運動部活動において生徒の心理的成長を促進させるための指導方略を検討することである。 まず、生徒の心理的側面に影響を与えている要因について先行研究をもとに検討したところ、指導者の存在に関する言及が多いことが確認された。特に、生徒の内発的動機づけに対しては、指導者がどのようなフィードバック行動をするかということよりも、生徒と指導者がどのような関係であるかということが大きな要因であることが示されており、生徒と指導者の関係の重要性が示唆された。そして、生徒と指導者の関係については、指導者の受容的な関わりと統制的な関わりをもとにした機能面からの検討と、指導者に対する親和性や信頼感などの情緒面からの検討がそれぞれに行われており、今後これらを統合した生徒と指導者の関係の捉え方が求められる。 次に、運動部活動における生徒の心理的課題について先行研究をもとに検討したところ、以下の3点が課題となっていることが明らかとなった。1点目は、勝利至上主義の雰囲気の中で指導者の管理的な指導による生徒の依存的態度である。2点目は、本来自主的な参加を前提とする運動部活動ではあるが、周囲の人間関係を意識した他者との関わりの中で自己の欲求の表現が制限される傾向にあり、自己決定の在り方が課題となっている。3点目は、運動部活動に対するオーバーコミットメントと心身への影響である。 したがって、今後は、上記の3つの観点から生徒の心理的側面に焦点を当て、生徒と指導者の関係の在り方との関連を検討していく必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は先行研究の概観を通して、対象となる要因や因子の決定および、本研究の目的や意義について精緻化することができた。 また質問紙調査に関しては未実施であるが、既に調査依頼がほぼ済んでおり、調査を実施できる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
運動部活動における生徒の心理的課題について生徒と指導者の関係に着目して検討するため、量的データと質的データの両面から調査を行っていく予定である。 量的調査に関しては、まず調査協力を得るため、対象となる運動部活動の顧問に対して本研究目的や調査の概要について事前説明を引き続き行う。了解の得られた部活動に対しては、練習や試合の際に本研究者がグラウンドへ赴き、生徒に対して質問紙調査の協力の依頼を行う。その際、本研究の目的や調査の概要について再度説明し、調査協力に対するインフォームド・コンセントに留意して、調査を実施する。承諾の得られた生徒を対象に集団調査法にて実施し、質問紙は本研究者により、その場で配布、回収される。 具体的には、質問紙をもとに、①生徒に対する指導者の関わり、②指導者に対する親和的信頼感、③生徒の指導者に対する依存性、④運動部活動に対する参加動機の自己決定性およびオーバーコミットメントについて生徒に尋ね、指導者との関係に関するデータもとに生徒と指導者の関係パターンを8パターンに分類し、各生徒の心理的側面の特徴について検討する予定である。 次に、生徒と指導者の関係パターンごとに生徒と指導者の関わり合いと生徒の受け止め方とを質的に検討していくために、質的調査を実施する。具体的には、先の分析により同定された生徒と指導者の関係パターンごとに対象者を数名ずつ選定し、選定された対象者に対して、それぞれ部活動場面での観察と半構造化面接を実施する。観察法と面接法による質的調査により、実際の指導場面における指導行動と生徒の受け止め方についての個性記述的な検討を加えることができると考えている。
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Causes of Carryover |
当初、データの逐語起こしをアルバイト学生に依頼する予定であったが、本年度依頼できた分量がわずかであり、その多くを次年度に持ち越したため、その分の支出が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の上期のうちに、本年度使用できていない分も含めて、逐語起こしの謝金として使用を予定している。
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