2015 Fiscal Year Research-status Report
スポーツにおける瞬時の判断能力を強化するトレーニング方法の開発:視線行動への着目
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15K16474
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
田中 ゆふ 近畿大学, 経営学部, 准教授 (00610734)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 知覚 / 弁別閾 / CG / 主観的等価点 / 潜在意識 / 野球 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、瞬時の判断が必要不可欠なスポーツ場面における、素早く正確な予測反応(以下、予測スキル)を導くためのトレーニング方法の開発を目指し、予測スキル発揮に深く関係する相手選手の身体運動と視線行動を双方向的なアプローチにより解明する統合的研究を展開することである。本研究は3つの研究によって構成され、具体的には,1)競技熟練者が有する、意識には上らない微細な身体動作の変化に対する判別能力を検証する;2)予測スキル獲得過程における視線行動の変容プロセスを解明し、そのうえで初心者に対し、有益な視線行動の教示を与えて予測スキルの発揮度を検討する。本研究は,将来的にスポーツの競技力向上のための極めて重要な知見を実証するための実験研究である。 平成27年度では、野球の打者の予測判断において、意識には上らない範囲での微細な投球動作の違いを判別可能な身体運動の変化量を明らかにする。さらに、判別時の視線行動の違いに着目し、優れた動作の微細な物理的変化と視線行動関係性をを熟練度別に比較検討することを目的とした研究1における1つ目の実験に着手した。 実験の結果、野球熟練者と非熟練者での基準投球動作に対する主観的等価点は熟練者が優れていたが、非熟練者との違いは小さかった。しかし、25%-75%弁別閾については、非熟練者の範囲が熟練者に比べて広く、微細な動作変化への判断については熟練者の優れた判別能力が示された。本実験では、回答に対する確信度についても同時に回答を求めたが、熟練者については回答の確信度に応じて高い正答率が得られる結果となった。しかしながら実際の反応と主観的な確信度には差があり、意識には上らないレベルでの微細な変化への判別時には潜在的な既存の知識を活用していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、3つの研究で構成しており、平成27年度には1つ目の研究に着手した。研究1については、当初1つの実験でその研究目的を達成する予定であったが、より詳細な研究方法を検討した結果、視線計測を行う方法(実験1-2)と行わない方法(実験1-1)の2種類の方法によるデータ計測を実施することが適切と判断し、結果2つの実験を行うこととした。そのため、平成27年度では研究1の実験1-1の実施に留まり、実験1-2の視線計測には至っていない。しかしながら、実験1-1については、計15名の実験参加者のデータ計測が終了しており、1つの実験を完了するという当初の計画通りのペースでに順調に進捗している。現在は統計データの分析段階であり、詳細結果を踏まえて研究1の後半である視線計測を実施する実験1-2に着手する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では2つの実験から成る研究1と研究2の実施を予定している。当初研究3までを実施する予定であったが、研究1の内容を1つの実験から2つの実験に変更したため、研究3については平成29年度での実施に変更する。 当初の予定に対しおおむね順調に進展しているものの、実験が増えたことにより、よりやや遅れている部分もあり、その原因としては、統計分析ソフトの選定と視線計測装置による適切なデータ取得のための実験方法の準備に時間を要している、さらに実験参加者とのスケジュールの調整が挙げられる。これらの点に関しては平成28年度の計画を作成し順調な進捗に向けて準備を整えている。
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Causes of Carryover |
機材の購入のために、次年度以降の前倒し支給を受けたが当初の予定よりも機器設備に関する支出が増額した。次年次以降の研究計画を勘案し旅費と実験参加者への謝礼を抑制した結果、合計支出額に若干の残額が生じた。今年度分の残額は、次年度の予算と合わせて支出する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度では、データ解析のためのソフトウエア購入費として15万円、実験用設備のために5万円、実験参加者への謝礼(30名)として9万円、学会発表・打ち合わせのための国内旅費として5万円、学術雑誌への投稿論文作成時に生じる英文校閲料として6万円を計画している。
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