2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K16477
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Research Institution | Shikoku University |
Principal Investigator |
細谷 洋子 四国大学, 生活科学部, 講師 (60389856)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ブラジル文化 / 基層理念 / カポエイラ / マリーシア |
Outline of Annual Research Achievements |
全3年度計画の初年度に当たる本年度は、ブラジルへ調査に行き、「カポエイラ」における最重要理念であるマリーシアの資料収集をおこなった。また文献研究では1800年代のマリーシア概念の社会的文脈上の構築について焦点を当てた。これまでマリーシアについて歴史的観点から時系列で経緯を明らかにした研究は低調であったが、マリーシアのこうした社会的文脈で帯びてきた意味合いを知ることは現在のカポエイラの理念の内実を知る手掛かりとなり、他の格闘技とは異なるカポエイラの文化的独自性を理解する上で重要といえる。 結果としてマリーシアは「ずる賢さ」と一般的には訳されるが、カポエイラ実践者・研究者のNestor Capoeiraによるとマリーシアとは「maldade残酷さ」「falsidade虚偽」と「traicao反逆」を含む上位概念であることが明らかになった。さらにマリーシアは、カポエイラのゲームに必要な哲学、能力や戦略であり、いわば経験の一種のように身体的知恵を意味される。 また、Nestor Capoeiraによると歴史的観点からマリーシア概念の出現の端緒は1800年代であった。当時の警察による記録によると、当時は「アフリカのゲーム実践者」という括りが「カポエイラ」と呼ばれ、カポエイラ実践者ではない社会的堕落者も「カポエイラ」実践者とみなされた。このことからマリーシアに虚偽や反逆という否定的意味合いが徐々に付帯されたと考えられる。 そして、現地におけるカポエイラのゲームにおけるマリーシアに関する実践者へのインタビュー調査によるとマリーシアとは戦術、技術、哲学、習得方法等であり、マリーシアの具現化された形式が挙げられた。こうした現代におけるマリーシアの解釈について、次年度に追加調査をおこなう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初はブラジル文化の基層理念の主要文献研究を予定していた。しかし、カポエイラにおける限定的な理念の構築過程について解釈の必要性が生じたため、先に文献研究並びに現地調査によってそれを試みた。 よって、本年度は次年度以降に予定していた計画を先取りして実施した形になり、次年度以降は本年度の成果を踏まえてより汎用的なブラジル文化の基層理念としてのマリーシア解釈の拡がりについて文献研究をおこなう。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、現代におけるマリーシアの解釈について、カポエイラ実践者らへの現地でのインタビュー調査並びに文献研究を継続しておこなう。また、本研究課題の目的達成に必要なブラジル文化の基層理念とカポエイラの「マリーシア」の関連について、和書、ポルトガル語文献、英語文献を中心に文献研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
文献購入の端数として46円生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に文献購入費に充てる。
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