2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K16477
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Research Institution | Shikoku University |
Principal Investigator |
細谷 洋子 四国大学, 生活科学部, 講師 (60389856)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カポエイラ / マリーシア / ブラジル文化 / 基層理念 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、全3年度計画の2年目であった。前年度に引き続き、カポエイラにおける重要理念「マリーシア(ずる賢さ、抜け目のなさ)」ならびにブラジル文化における基層理念の研究を進めた。 「マリーシア」については、その歴史的構築過程に加え、現在のカポエイラのゲームにおいて「マリーシア」が機能していると主観的に判断されるゲーム(以下、「マリーシア」のあるゲーム)の身体技法・戦術について調査・分析をおこなった。現地調査としてブラジルのリオデジャネイロにおけるカポエイラの練習やイベントへの参与観察で収集したゲームの映像資料を分析した結果、「マリーシア」のあるゲームにおいて複数の戦術パターンが抽出された。「マリーシア」が「カポエイラらしさ」醸成の機軸として機能しており、「マリーシア」という理念によって方向づけられるカポエイラの独自性(カポエイラらしさ)が形成されていることが確認できた。 また、ブラジル文化に通底する理念としてロベルト・ダマッタの提唱した居住空間にみるブラジル人の秩序概念、ブラジル社会における秩序を維持・形成する独自の視点に依拠し、「マリーシア」の解釈を試みた。「マリーシア」は、秩序と非秩序、そしてグレーゾーンを、カポエイラのゲームのおこなわれる「場の文脈」に応じて行き来することが可能な、一種の可変的なルールとして位置づけられると結論づけた。この成果の一部については、日本スポーツ人類学会第18回大会にて「カポエイラの理念『マリーシア』の読み直し―ロベルト・ダマッタの三元論的視点から―」として口頭発表をおこなった。 最終年度となる次年度は、総括としての「マリーシア」の史的再構成、「マリーシア」によって形成される「カポエイラらしさ」の補足研究、そしてブラジル文化の基層理念と「マリーシア」の相関の解明が課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、前年度の補足研究をおこなえた一方で、ブラジル文化の基層理念に関する文献研究が遅れ気味であった。次年度が最終年度となるため、これらを優先的におこないたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、総括として「マリーシア」の史的再構成をおこない、「マリーシア」によって身体技法・戦術面から形成される「カポエイラらしさ」の特徴の整理、実践者らへのインタビュー、そしてブラジル文化の基層理念と「マリーシア」の相関の解明に着手する。
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Causes of Carryover |
フィールドワークの時期によって、航空券の価格に変動が生じたことが原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用分は、当初の予定どおりフィールドワーク費用に充てる。
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