2015 Fiscal Year Research-status Report
悲観的認知方略の肯定的側面―競技場面における防衛的悲観主義―
Project/Area Number |
15K16481
|
Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
奥野 真由 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, その他部局等, 研究員 (00633215)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | スポーツ心理学 / アスリート / 競技スポーツ / 心理サポート / 防衛的悲観主義 / 認知的方略 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、学習場面において“物事を悪い方に考えることで成功している適応的な悲観者”の存在が指摘されている(Norem & Cantor,1986)。彼らのこの特徴は、防衛的悲観主義と呼ばれ、高い不安を動因として努力を動機づけており、実際に望ましい結果を得ている。この様な背景のもと、競技場面における悲観性の肯定的な作用を検討を行った。防衛的悲観主義の認知的方略を用いているアスリートは、悲観的思考の肯定的な作用を実感しており、意識的に用いていることが明らかとなった(奥野・佐藤・土屋,2014)。本研究では、アスリートが自分自身に合った心理的準備の方法や心理的戦略を用いて競技に挑めるよう、心理サポート体制のあり方について検討を行う。 平成27年度は、インタビュー調査を行うにあたり、実際の競技場面において悲観的思考が現れる特徴的な場面や、またそれに対してアスリートが、どの様に認識し対処しているかを整理した。そして、インタビューマニュアル(質問項目)を精査するため、アスリートや競技チームを対象とした心理サポート事例が発表される学会や研究会に参加した。また、研究代表者も自らが担当する心理サポート事例を発表し、スーパーバイザーおよび有識者との意見交換を行った。その結果、悲観的思考の肯定的な作用を実感し、意識的に用いて実力発揮へと結びつけているケースの他に、肯定的な作用を実感しつつも、“競技場面では楽観的思考が良い”という囚われや、“悲観的な人がいると雰囲気が暗くなる”といった周囲に与える影響への配慮などから、理想と実際にズレを感じ悩みへと発展するケースが見受けられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、防衛的悲観主義の観点を用いて、認知的方略を考慮したアスリートとチームへの心理サポート体制のあり方について検討することを目的とした。そこで、次の3点について明らかにすることとした。①競技場面で悲観的思考が肯定的な作用をもたらすまでの実際の過程を明らかにする。②競技場面に特化した楽観・悲観性尺度を作成する。③防衛的悲観主義の認知的方略に対する指導者の認識とチームに及ぼす影響を明らかにする。平成27年度は、防衛的悲観主義の認知的方略を用いたアスリートの競技過程を明らかにするため、インタビューマニュアル(質問項目)の精査に取り組んだ(①)。防衛的悲観主義の認知的方略を用いることで、実力発揮へと結びつけることができる可能性と、悩みへと発展する可能性という視点を得ることができた。この視点をもとに、次年度以降インタビュー調査を実施する。当初は、平成27年度にインタビュー調査実施を計画していたため、やや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、競技場面で防衛的悲観主義の認知的方略を用いているアスリートを対象とし、インタビュー調査を実施する。防衛的悲観主義の認知的方略を用いることで、実力発揮へと結びつけることができる可能性と、悩みへと発展する可能性という二つの視点をもとに、競技場面での防衛的悲観主義について明らかにする。さらに、質的分析を用いて防衛的悲観主義の認知的方略が実力発揮へと結びつく要因を整理する。その結果をもとに、アスリートが自分自身に合った心理的準備の方法や心理的戦略を用いて競技に挑めるよう、心理サポート担当者の関わり方について検討を行う。
|
Causes of Carryover |
インタビューマニュアル(質問項目)の精査に時間を要したことに加え、インタビュー調査の研究協力者と研究代表者の都合が合わず、今年度はインタビュー調査を実施することができなかった。よって、主に旅費、人件費・謝金を次年度へ繰り越すこととなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度にインタビュー調査を実施する。インタビュー実施場所は研究協力者の都合を優先するため、旅費として使用する。また、研究協力者への謝金、インタビューデータの質的分析に必要な人件費・謝金として使用する。
|