国家規模のヘルスキャンペーンにおける戦略策定に関する研究

2017 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K16502
• Research Institution: The University of Tokyo
• Principal Investigator: 石川 善樹 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 客員研究員 (80595504)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: がん検診 / 受診率向上 / ヘルスキャンペーン / 行動科学モデル

Outline of Annual Research Achievements

本研究は、国家規模のヘルスキャンペーンにおいて、いかにして戦略策定を行うか、という方法論の構築を狙いとしている。平成２９年度においては、特に大腸がん検診についてヘルスキャンペーンの戦略策定を行うことを想定し、研究を行った。具体的なステップとしては、以下の２つである。

①戦略の大きな柱となる「どの心理要因をターゲットとするのか？」について検討を行うためにインターネット調査を行った。これは平成２７年度に実施したメタアナリシスに基づき、大腸がん検診受診行動を予測する心理要因として特定された２つの要因である「障害」「自己効力感」について、その中でも特に何をキャンペーンのターゲットとすればよいか明らかにすることを目的とした。この意識調査で得られたデータについて、本研究で平成２７年度開発した統計手法に基づき、キャンペーンで焦点をあてるべき心理要因を抽出した。

②ヘルスキャンペーンがどのような心理的メカニズムを経て対象者の行動変容のモチベーション（大腸がん検診の行動意図）に影響を与えうるのか、上記意識調査のデータを用いて検討を行った。特に国家規模のヘルスキャンペーンでは公平性、つまり社会経済状況（Socioeconomic Status:SES）が苦しい立場にある方々に対する配慮が重要となるが、SESによってヘルスキャンペーンの効果が異なるのかどうか、もし異なるならそれはどのようなメカニズムによるものなのか、検討を行った。それによって今後の国家規模のヘルスキャンペーンの戦略策定を行う際に、公平性を担保するためにどのような対策が必要となりうるか考察を行った。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

当初は研究計画に入っていなかったが、「キャンペーンがいかなる心理的メカニズムによって対象者に影響を与えうるのか」という点についても検証を行うために、文献調査等を行っていたため、進捗に遅れをきたした。

Strategy for Future Research Activity

今後は、平成２９年度に調査を行って企画されたヘルスキャンペーンについて、実際に介入を行い、その評価を行うこととする。

ただし、当初は地域で受診率向上のための介入を行うことを想定していたが、折衝が難しいこともあり、インターネット上での介入を行うことを検討している。しかしながら、介入場所が地域であれ、ネットであれ、本研究の目的たる、国家規模のヘルスキャンペーンにおける戦略策定の方法論を開発するという当初の予定には大きな支障を与えるものではなく、最終年度となる平成３０年度に総括を行う予定である。

Causes of Carryover

当初は平成２９年度中に研究が終了する予定であったが、研究の遅れから介入研究を行うことができず、次年度に繰り越すこととなった。これについては、インターネット上での介入研究に使用することを予定している。