2015 Fiscal Year Research-status Report
季節と地理的環境の違いが喘息体質者の屋外運動時における呼吸機能変化に及ぼす影響
Project/Area Number |
15K16511
|
Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
高木 祐介 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (70707702)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 喘息 / 運動 / 呼吸機能 / 季節 / 地理的環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度および平成28年度における本研究課題のメインの調査は、北海道・東京都・山口県・沖縄県の4都市の秋季・冬季・春季・夏季において、喘息体質を有する者の運動(6分間のフリーランニング)時の呼吸機能指標を評価することである。平成28年5月の段階で、秋季・冬季の調査を終了し、現在春季の調査を行っている最中にある(残すところ北海道のみ)。夏季の調査を平成28年7月に実施し、本研究課題のメインの調査が終了予定である。 これまでの秋季および冬季の調査から、仮説通りの結果、つまり喘息体質を有する者は低温環境になるにつれ、運動強度が高いランニングのような有酸素性運動後に呼吸機能が著しく低下するということを確認している。本研究の特色である全国4都市にて各季節に調査を行うと、大きく異なる環境とそれに伴う特有のストレスが理解できた。同じ秋季でも、北海道では真冬並みの寒冷であり、他方、沖縄県では20℃を超えていた。冬季の調査では、その気温差はさらに大きいものであり、これらの差は、都市間における喘息体質を有する者の安静時の呼吸機能指標の差に影響を及ぼしているものと推察された(詳細な統計学的有意性は現在解析中である)。また、北海道において、喘息体質を有する者の運動後の呼吸機能がむしろ改善された者がみられた。安静時の測定値に問題がないこと、運動強度は秋季と変わらなかったこと、秋季では呼吸機能指標が運動後に下がったこと、これらを勘案すると、降雪による影響が一部考えられ、今後の研究、特に北海道における運動誘発性喘息の予防に関する重大な知見が得られる可能性が示唆された。 今後、夏季の調査結果を加え、統計学的解析および質的解析を行い、本邦における季節と地理的環境の違いが喘息体質を有する者の運動時の呼吸機能に及ぼす影響に関する知見を報告する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における調査は、平成27年11月の秋季から始まった。現在まで秋季調査、冬季調査が終了しており、北海道、東京都、山口県、沖縄県での調査はいずれも漏れなく実施できている。研究計画書に記載したBuffer roomの実用性を検証する調査(冬季調査のみ)については、対象者が学生であるため、学校の授業との兼ね合いでどうしても実施が困難になり、主任研究者と研究協力者との協議の結果、行わないことになった。しかしながら、その分、メインの調査に費やす時間が増え、測定の精度がより高くなり、調査はスムーズに進行している。 また、対象者数について、北海道(9名)と東京都(9名)が山口県(14名)や沖縄県(13名)に比べ少ない。ボランティアによる研究協力者で、且つ研究の内容に同意し4季節4回の調査に参加でき、さらに「喘息体質」の定義にあてはまる対象者となる場合、大きく絞られてしまい、この人数になった。統計学的処理に関していえば、北海道、本州、沖縄県で区分した場合、北海道の対象者数は少ないことから統計学的検定をかけることが困難である。そのため、質的な分析方法を採用し、成果を公表する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の調査の中で最もハードなスケジュールが予想されるのは、目下実施中の春季調査(平成28年4月及び5月)である。新年度になり、学校業務および学校授業との調整がこれまでの中で最も難しく、主任研究者、4都市の研究協力者、4都市の学校に在学する対象者との間で、幾度となく調整を行った。また、山口県での調査では、雨天時の対応策がなく、天候次第の問題がある。そのため、主任研究者が2度にわたり、山口県へ行き調査を行った。報告書提出直前で沖縄県での調査が終了し、残すは北海道だけになっている。 最終調査の夏季は、おおかたスケジュールができている。対象者も冬季の調査から慣れ始め、また、主任研究者との信頼関係も良好であり、調査は極めてスムーズに行われている。そのことから、春季調査が無事に終了すれば、研究計画通りのペースで本研究課題のメインの調査が完結する。 平成28年冬季および平成29年夏季では、さらに鹿児島県の桜島の火山灰と季節風および運動時の喘息体質者の呼吸機能変化との関連性を検討する予定であり、鹿屋体育大学の山本正嘉教授と綿密に計画を練っている。平成29年度は、本邦における広域にて行った調査結果を発表する。
|
Causes of Carryover |
平成27年度では、購入を予定していたものの、予算と在庫の関係で購入できなかった物品があった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度も平成27年度同様に、春季と夏季の2季節の調査があるが、前年度と違い、前期の授業スケジュールの都合上、複数回に分けて調査対象都市へ行く必要性がある。また、使用しているスパイロメーター等の管理に費用が生じる。加えて、得られた研究成果について、随時関連学会や学術雑誌で公表するための費用(投稿料や掲載料等)および旅費が必要になってくる予定である。
|