2015 Fiscal Year Research-status Report
運動強度に着目した異所性脂肪蓄積、インスリン抵抗性改善メカニズムの解明
Project/Area Number |
15K16522
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
竹野 景海 順天堂大学, 医学部, 助教 (50459062)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インスリン抵抗性 / 運動強度 / 細胞内脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】近年、糖尿病や動脈硬化発症の予防・治療において、運動量に加えて、運動強度の重要性が認識されつつあるが、運動強度の違いが骨格筋代謝反応にどのような違いを与えるかについて、不明の部分が多く残されており、本研究では、得られたヒトの骨格筋生検サンプルをリピドーム、マイクロアレイ解析し、in vitro, in vivoによる機能解析を通し、適切な「運動強度」とそれを裏付けるメカニズムが明らかとする。 【方法】同意が取得された被験者を登録し、消費エネルギーを同一にした(300kcal)低強度運動群(40%VO2max)と、高強度運動群(70%VO2max)にランダムに分け、5日間連続で行わせ、その前後で生理学的な測定及び、骨格筋生検を行う。測定日前日の21時からは絶食とし、1H-MRS法による前脛骨筋、ヒラメ筋における細胞内脂質の定量、MRIによる腹腔内脂肪・皮下脂肪量の定量を行う。その後、人工膵臓室にて使い捨て生検針を用いて筋生検及び脂肪生検を行う。筋生検終了後、安定同位体[6,6-2H2]glucoseを用いた高インスリン正常血糖クランプ検査により、肝臓、骨格筋のインスリン抵抗性を判定する。 【本年度の研究実績】20名の検査がすべて終了し、低強度運動群11名、高強度運動群9名に無作為割り付けが行われた。運動介入後の結果、安定同位体を使用した高インスリン正常血糖クランプ検査にて測定した骨格筋インスリン感受性は、両群共に介入前に比較して改善を認めた一方で、骨格筋細胞内脂質は、5日間の介入により、低強度運動群はでほとんど変化を認めなかったのに対し、大変興味深いことに、高強度運動群では介入前に比べ介入後には1.5倍以上の有意な増加を認めた。同一条件下のもとで、異なる運動強度による骨格筋内細胞内脂質の変化をみた報告はなされておらず、本研究が初めての報告になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度はヒトのサンプル解析データを整理し、テーマ①低強度の運動の運動は骨格筋細胞内脂質を減少させ、中~高強度の運度では増加させるメカニズムを明らかとする、テーマ② 中~高強度の運動では骨格筋細胞内脂質の蓄積が生じるにも関わらず、インスリン抵抗性が生じないメカニズムを明らかとするに関して検討するとしているが、平成27年3月の時点で20名のデータベースの構築がすべて終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度中に得られたサンプルを用い、骨格筋RNAを抽出しマイクロアレイ解析を行うと同時に、リピドームによる代謝産物の解析を行う。リピドーム解析においては、fatty acyls, glycerolipids, glycerophospholipids, sphingolipids, sterol lipids, prenol lipidsに分類される600の代謝産物を網羅的に測定する。これらの解析から、テーマ①、テーマ②に関連する候補遺伝子10程度まで絞り込む。 (遺伝子の機能解析)解析から得られる候補遺伝子を関与が強く示唆された遺伝子から順に、機能解析について検討を行う。最近我々は骨格筋における細胞内脂質蓄積があってもインスリン抵抗性が生じないメカニズムの一部として骨格筋における脂肪酸輸送担体の差が重要である可能性を世界で初めて明らかとしており(Kawaguchi M. JCEM, 2014)、手技などにおいて問題はない。
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