2015 Fiscal Year Research-status Report
皮膚バリア機能を果たす極長鎖脂肪酸含有アシルセラミド生合成メカニズムの解明
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15K16552
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村井 勇太 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 助教 (20707038)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アトピー性皮膚炎 / 魚鱗癬 / 皮膚バリア / 超長鎖脂肪酸 / アシルセラミド / 光アフィニティーラベル法 |
Outline of Annual Research Achievements |
アトピー・魚鱗癬は主に角質層の皮膚バリア機能障害によって引き起こされる。特に皮膚バリアには特有の超長鎖脂肪酸(C32,34,36)を持ったアシルセラミドが存在し、このアシルセラミドの減少が疾患の原因である。この皮膚表面特有のアシルセラミドの生合成機序は完全には解明されておらず、前駆体であるω-OHセラミドを基質とするアシルトランスフェラーゼの全貌は未解明のままである。またアシルセラミドの合成法はいくつか報告されているが、汎用性が低く、今後塗布薬や化粧品などへの応用は困難である。本研究は光アフィニティーラベル法を利用したアシルとランスフェラーゼの解明および超長鎖脂肪酸含有アシルセラミドの効率的全合成を目的としている。本年度は光アフィニティープローブに用いるリガンド(ω-OHセラミド)並びにアシルセラミドの効率的合成を行い、特に超長鎖脂肪酸(C32,34,36)の効率的な合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、超長鎖脂肪酸の合成は安価なアルキン-ハロゲン化アルキルのカップリングを用いて超長鎖の構築および鎖長の制御を検討した。炭素鎖C20前後までは60~80%程度の収率で反応が進行することを確認した。しかしそれ以上の炭素鎖になると極端に反応収率が低下すること、反応溶媒に発癌性の疑いがあるヘキサメチルリン酸トリアミドを大量に使用しなければならないことも判明した。これを克服するため安価な試薬を用いて、より効率を高めた多岐に渡る反応を検討したことで当初の予定以上の時間を費やした。 結果、Wittig反応による伸長反応が最も効率であることが判明し、2段階のWittig反応で超長鎖脂肪酸の合成に成功し、また鎖長(C32,34,36)の制御にも成功した。他グループの同様な Wittig反応による合成法では収率40%以下であるが、本研究では超長鎖脂肪酸合成においてより効率(80%程度)な反応系確立に成功した(論文作成中)。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は、27年度中に完成予定であった超長鎖脂肪酸含有ω-OHセラミド並びにアシルセラミドの合成を前期中に達成する。またWittig反応で得られるオレフィン部位は接触還元による重水素導入も検討する。後期は光アフィニティープローブの作成、有用性を確認し標的アシルトランスフェラーゼの釣り上げ実験に移行する予定である。
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Causes of Carryover |
光プローブ作成に若干の遅れがあったため、その合成試薬の調達分に差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
差額分は遅れているプローブ合成試薬の調達に使用する。
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