2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K16557
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
斉藤 毅 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (80609933)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | オレキシン / 睡眠 / 覚醒 / 作動薬 / ケージド化合物 / スイッチング化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「オレキシン神経伝達機構を作用部位・時間分解能を確保して解析解明するのための分子ツールの開発」を目的として、光により活性のon、offを制御できる光応答機能を付与した分子の開発を行うものである。初年度は、本研究の中心的な役割を果たす高活性な①オレキシン受容体作動薬の開発と、①で見出した分子に対し②光感受性官能基を導入するための導入位置の最適化について検討を行った。 ①オレキシン受容体作動薬の開発 我々はオレキシン受容体作動活性を指標としたハイスループットスクリーニング(HTS)により見出したヒット化合物を基に、水溶性かつ高活性なOX2R選択的作動薬YNT-185を見出した。YNT-185はマウスを用いた脳室内投与において、顕著な覚醒誘導効果を示した。本研究結果は、世界初のオレキシン受容体作動薬の発見として、本年度Journal of Medicinal Chemistry誌に掲載され、Featured Articleに選出された。 ②光感受性官能基を導入するための導入位置の最適化 ①で見出したYNT-185について、まず光で活性をonからoffにスイッチング可能にするアゾベンゼン(AB)基を導入した化合物について、分子設計し、種々合成を行った。その結果、活性を保持した状態でAB基を導入することが可能であることを見出した。しかし、本分子は光スイッチング能については有していないことがわかった。また、光で活性をoffからonに切り替えるケージド基の導入位置についても検討を行った。YNT-185の有する極性官能基をウレタン結合でマスクした分子を種々合成したところ、そのうち1つの極性官能基においてオレキシン受容体作動活性を失活せしめることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
①オレキシン受容体作動薬の開発(達成済み) これまでにオレキシン受容体作動薬についての報告は無く、本研究の遂行には分子基盤とナルオレキシン受容体作動薬を創製する必要がある。報告者は、当該年度に主に覚醒を誘導するオレキシン2受容体(OX2R)を標的とした探索研究によりオレキシン受容体作動薬YNT-185を見出し、そのマウスにおける薬理作用の調査を完了した。YNT-185は世界で初めてとなるOX2R選択的作動薬であり、当初の計画通り重要な分子を得ることに成功している。 ②活性を光でon-off制御する分子(スイッチング化合物)の創製と評価(30%達成) 光でon-off制御する分子を見出すために、まず活性を維持にした状態で光スイッチング官能基であるアゾベンゼンを導入した分子を見出す必要がある。当該年度では、YNT-185のリンカー構造をアゾベンゼンへと置換した化合物について合成し、その活性を評価した。その結果、活性を維持した状態でアゾベンゼン構造単位を導入することが可能であることを見出した。しかし、当該化合物の光スイッチング能を評価したところ、分光学測定ではtrans体からcis体へのスイッチングを観測することはできなかった。 ③活性を光でoff-on制御する分子(ケージド化合物)の創製と評価(40%達成) YNT-185を分子基盤として、光でoff-on制御する分子を見出すために、まず活性をoffにした状態でケージド基を導入した分子を見出す必要がある。そこで、当該年度では、YNT-185の種々の官能基における構造活性相関研究を実施し、官能基のマスキング部位の特定を行った。①の過程で見出した構造活性相関情報も有意義に活用し、官能基をBoc基もしくはCbz基でマスクした化合物を合成し、評価したところ、興味深いことに1つの官能基において活性を完全に消失させることができることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、光スイッチング化合物の創製について、活性を保持したアゾベンゼン化合物を見出すに至っているが、当該化合物には光スイッチング能は観測されなかった。アゾベンゼン上には、合成の都合上メトキシ基やアミノ基が導入されており、これらの電子的な要因がtrans-cis異性化に影響している者と考えられる。一般に、アゾベンゼン上の電子密度がpush-pull型になっていると光異性化速度は極端に加速し、異性体を観測することが難しいとされる。そのため、次年度の方策としては、アゾベンゼン上に電子吸引基を有する化合物について新たに設計し、オレキシン受容体作動活性と光スイッチング能について評価を行っていく予定である。 また、ケージド化合物の創製については、当該年度に見出した活性に大きく関与する官能基をケージド基でマスクした分子を合成する。ケージド基としては、クマリン骨格を色素部位として有するBhc基とニトロベンゼンを色素部位とするニトロフェニルエチル(NPE)基を導入する予定である。合成した化合物については、オレキシン受容体作動活性の有無と脱ケージング活性について評価を行う。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Design and Synthesis of Non-Peptide, Selective Orexin Receptor 2 Agonists2015
Author(s)
Nagahara, T.; Saitoh, T.; Kutsumura, N.; Irukayama-Tomobe, Y.; Ogawa, Y.; Kuroda, D.; Gouda, H.; Kumagai, H.; Fujii, H.; Yanagisawa, M.; Nagase, H.
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Journal Title
Journal of Medicinal Chemistry
Volume: 58
Pages: 7931-7937
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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