2015 Fiscal Year Research-status Report
レシオ変化型核磁気共鳴プローブによる核酸の同時並列的検出法の開発
Project/Area Number |
15K16560
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
坂本 隆 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (80423078)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 分子プローブ / 核酸検出 / 19F NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、遺伝子発現ネットワークを動的にとらえ、これを明らかにすることが可能な、「多種類の標的核酸を同時、定量的、かつリアルタイムに検出可能な新手法の開発」を最終目的としている。研究期間内に「10種類以上の標的DNA・RNAの同時・定量検出」が可能な新手法の確立を目指す。 平成27年度は、既に開発済みの19F核磁気共鳴ケミカルシフトがレシオ変化する核酸検出プローブを足がかりに、いくつかのケミカルシフトの異なるフッ素化合物で修飾したヘアピン型オリゴDNAプローブを合成した。この19F NMRを測定した結果、プローブのみの場合、および相補的DNA添加後のケミカルシフトが、それぞれ修飾したフッ素化合物によって異なることを見出した。このことから、本手法により複数の標的核酸を同時に定量検出できる可能性が示された。また、DNA結合性の低分子蛍光プローブであるヘキスト33258にビストリフルオロメチルベンゼンを修飾した低分子プローブを合成した。この19F NMRを測定した結果、認識配列であるAATT配列を含む2重鎖DNAを添加した場合、プローブのみの場合とは異なるケミカルシフトが現れ、さらにこのケミカルシフトがAATTに隣接する塩基により異なることを見出した。これにより配列の異なる4種類のDNAを同時検出できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では19F NMRスペクトル上での「10種類以上の標的DNA・RNAの同時・定量検出」を目的としているため、まずケミカルシフトの異なる核酸検出プローブを準備すること、また、そのケミカルシフトが標的核酸依存的に変化することが必須である。今年度は、新たに合成したヘアピン型DNAプローブがこの点を満たすことが明らかとなったことから、目指す検出システムの基本原理は確認できたものと考えている。また、フッ素修飾低分子蛍光プローブによるDNA検出では、標的核酸の配列に依存して、異なる位置に19F NMRシグナルを検出でき、4種類のDNAの同時・一斉計測が可能であることが明らかとなった。このことは19F NMR上でのピーク分離により複数の核酸の同時検出が可能であることを示しており、目的である「10種類以上の標的DNA・RNAの同時・定量検出」に確実につながる知見を得ることができた。 以上のことから、研究は「概ね順調に進展している」ものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
目的である「10種類以上の標的DNA・RNAの同時・定量検出」を達成するには19F NMRケミカルシフトの異なる、少なくとも10種類以上のフッ素ラベルが必要となる。これを効率的に獲得するため、ポスト合成によりフッ素ラベルを導入可能な新たなプローブ合成法に挑戦し、ステムループ型DNAプローブを得る。これらのプローブに対して標的核酸混合溶液を加え、19F NMRを測定することで、目的である「10種類以上の標的DNA・RNAの同時・定量検出」を実証する。
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Causes of Carryover |
平成27年度は主に低分子型の核酸検出プローブの開発に注力したため、DNA合成試薬やDNA精製に必要なHPLCカラム等の購入を見合わせた。これにより次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、見合わせていたDNA合成試薬およびDNA精製に必要なHPLCカラム等の購入に充てる。
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