2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K16561
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
渡邉 貴嘉 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (70554020)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | タンパク質 / 抗体薬物複合体 / ケージド化合物 / 非天然アミノ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、抗がん剤に光分解性保護基を修飾することで薬効を一時的に抑えたケージド抗がん剤を化学合成し、抗体医薬として用いられているIgG抗体の特定部位にケージド抗がん剤を修飾することで、標的細胞に到達するまでは抗がん剤の薬効が抑えられており、標的細胞において光照射によって薬剤放出を制御可能な「ケージド抗体薬物複合体」の開発を目指している。 平成28年度は、前年度に見いだしたタンパク質・ペプチドのN末端特異的修飾法を抗体医薬として用いられているIgG抗体への適用を目指した。今回、モデル抗体として乳がん細胞に過剰発現している上皮成長因子受容体2型(Her2)に対するIgG抗体のN末端特異的修飾の検討を行った。N末端のアミノ基のpKa値(7-8)はLys側鎖のpKa値(9-10)より低いため、弱酸性条件下ではN末端アミノ基の一部は脱プロトン化しており求核性を保持しているため、アルデヒド誘導体と還元剤を用いた還元的アミノ化によってN末端優先的にアルデヒド誘導体を修飾可能になると予想される。N末端特異的修飾技術を構築するために、今回は修飾分子として蛍光標識アルデヒド誘導体を用い、pH 5において抗Her2 IgG抗体の還元的アミノ化を行った。反応後の蛍光標識抗体をペプチド断片化しタンデム質量分析で解析したところ、蛍光標識アルデヒド誘導体と抗体の濃度比を調節することでN末端アミノ基特異的に蛍光標識されることが確認された。また、蛍光標識化した抗体に抗原ペプチドを添加することで、抗原依存的な蛍光強度の増大が確認されたことから、抗体のN末端を修飾しても抗原-抗体反応を阻害しないことを確認した。 また、ケージド抗がん剤のアルデヒド誘導体の合成方法の改良を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
IgG抗体のN末端特異的な機能性分子の修飾技術はほぼ確立しており、このN末端特異的修飾技術は抗がん剤を含む様々な機能性分子に適用可能であることから、簡便かつ高効率なケージド抗体薬物複合体の作製が可能になると期待される。 一方でケージド抗がん剤の合成に関しては、抗がん剤であるチューブリン重合阻害剤(MMAF)のケージド化およびアルデヒド誘導体の合成方法に改良の必要性が生じ時間を要したため、ケージド抗体薬物複合体の作製および評価に遅れが生じている。これらの問題の解決および研究の遅れにより実施できていない実験を引き続き遂行し、学会発表および論文発表に向けた研究の取りまとめを行うため、研究期間を平成29年度まで延長申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
ケージド抗がん剤のアルデヒド誘導体の合成法の改良を早急に行う。もし抗がん剤MMAFのケージド化もしくはアルデヒド誘導体の収量が十分でない場合は他の抗がん剤のケージド化を試みる。一方、簡便かつ高効率にIgG抗体のN末端特異的修飾が可能になったことから、合成したケージド抗がん剤のIgG抗体のN末端特異的修飾を行うことでケージド抗体薬物複合体を作製し、その光化学特性などのin vitro評価および細胞実験への適用を試みる。
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Causes of Carryover |
ケージド抗がん剤の合成とケージド抗体薬物複合体の作製方法の検討および改良に時間を要したため、当初の計画に遅れが生じた。研究の遅延によって実施できていない実験の遂行と研究の取りまとめを行うために研究期間を延長し、それによって次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の遅延により実施できていない実験のための試薬購入費、学会発表のための旅費、論文発表のための英文校閲・論文掲載費に充当して使用する。
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