2015 Fiscal Year Research-status Report
レドックス制御に着目した膵臓がん代謝機構の解明と新規抗がん剤の創出
Project/Area Number |
15K16563
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
河村 達郎 国立研究開発法人理化学研究所, 理研-マックスプランク連携研究センター, 協力研究員 (60528561)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 膵臓がん / 代謝 / レドックス / 活性酸素種 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵臓がんは化学療法などの治療に対して抵抗性を示す難治性疾患であり、新たな治療法の開発が望まれている。本研究は特にレドックス制御に着目して、膵臓がん細胞の代謝機構を理解し、膵臓がんを標的とした新たな抗がん剤シーズを取得することを目的としている。本年度は特に以下の課題に注力した。 1. 膵臓がん細胞の代謝制御機構を標的とした抗がん剤シーズの探索:膵臓がん細胞株に対する細胞毒性を指標にして理研天然化合物バンク(NPDepo)の16,064化合物のスクリーニングを行い、8化合物をヒットとして得た。さらに2次評価として、解糖系での乳酸生産量の指標となる細胞外酸性化速度(ECAR)およびミトコンドリア電子伝達系でのATP生産の指標となる酸素消費速度(OCR)をそれぞれ測定することにより、この中の2化合物がエネルギー代謝に影響を及ぼすことを見出した。 2.膵臓がん細胞の代謝特性の解析:作用機序が既知の代謝制御化合物、レドックス制御化合物が膵臓がん細胞の生存および代謝に与える効果の解析を行った。 3. MTH1阻害剤の抗がん活性評価:膵臓がん細胞の約90%でKRAS遺伝子に変異が生じており、このような細胞に対しては活性酸素種(ROS)により生じた酸化ヌクレオチドの加水分解酵素であるMTH1の阻害剤が有効であることが近年報告された。そこで化合物アレイを用いて取得した新規MTH1阻害剤の評価を行った。その結果、MTH1阻害による抗がん活性は認められず、先行研究で示されたMTH1阻害剤による抗腫瘍効果がオフターゲットへの作用の結果であったことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代謝制御化合物およびレドックス制御化合物が膵臓がん細胞に対して及ぼす効果を解析するとともに、化合物ライブラリーの中から新たな代謝制御化合物の取得もできたため、順調に進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
膵臓がんを標的とした新規の抗がん剤シーズの取得を目指し、強い抗がん活性を示す代謝制御化合物・レドックス制御化合物の探索を続けるとともに、得られた化合物が代謝制御機構に与える効果を分子レベルで詳細に解析する。
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Causes of Carryover |
申請課題の遂行に必要であり、なおかつ次年度使用額(4,448円)以下で購入可能な消耗品がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度交付額と合わせ、申請課題の遂行に必要な消耗品の購入等に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)